芋焼酎の人気を押し上げた「プレミア焼酎」たち

銀座でワインバーをやっている頃、幻のプレミア焼酎が飲みたいというお客様の要望をかなえようと近所の酒屋に走ったとき、棚の真ん中に鎮座していた「森伊蔵」1升瓶は、5万円とか書かれていた……。これはうちの店では出しきれないと手ぶらで帰った次第。聞けば、銀座のクラブのママや支配人にはよく売れるのだとか。お店価格はいったいいくらになっているのやら。
かめ壺焼酎undefined森伊蔵

かめ壺焼酎 森伊蔵

正規販売価格とあまりに差があるプレミア&オークション価格は、製造元も関係者も悩みの種だろうし、消費者としても、高くて買いにくい焼酎なんて飲んでられるか!と怒りも爆発させたくなる。だけど、心のどこかで気になってしまうのは焼酎好きの心情だし、チャンスがあれば飲んでみたい気持ちもチラチラ沸いてくる。辛いね。

ただ、この焼酎とは思えない突拍子もない金額で、焼酎を知らない人へおいしい焼酎の存在を知らしめたわけだし、「安酒、労働者の酒、臭い酒」というマイナスイメージだった芋焼酎の印象をぐぐっとアップしてくれたのも、このプレミア焼酎のおかげだ。このランキングでは、ガイド個人の好みも含めて、今新たに幻の芋焼酎5銘柄を見直してみたい。

 

5位:かめしこみ 八幡 ろかせず 35度

かめしこみ八幡 ろかせず 35度
 
明治40年創業。薩摩半島の南部、南九州市川辺町の高良酒造は、ルーツは神主という家族のみで芋焼酎を造る小さな蔵元。ただし、焼酎の名前は全国、いや、いまや世界の焼酎ファンが知るところだ。

もっとも良質のサツマイモが出来るこの地域の厳選した芋と、米(八幡はタイ米も使用)と、敷地内から沸き出でる新鮮な湧き水を使い、一次仕込みも二次仕込みもすべて甕による仕込みで、丁寧に、生真面目に造られる。メインは「八幡(はちまん)」だが、白麹仕込みで、無濾過、アルコール度35%で仕上げたのが「八幡 ろかせず」だ。

普通は濾過することによって雑味や臭みなどを取り除くのだが、この八幡は仕込み・蒸留・熟成の段階で、キメ細やかな手間をかけることで清らかでピュアな味わいに仕上げられる、ゆえに、無濾過でも芋本来の旨味や甘味、コクといったものが十分に楽しめるのだ。これもひとえに、現当主高良氏の造りにおける技と感覚によるものなのだろう。アルコール35度だが、まろみとなめらかさがあり、ストレートでもいける。おいしい水で割ったお燗もしびれるほどうまい。

「ろかせず」の市場価格は、720mlで5,000円~10,000円。1800mlで10,000円~20,000円ほど。ちなみに、普通の「八幡」も、定価は900mlで1,000円前後、1800mlで2,000円前後だが、倍以上のプレミアがついている。さらに、めったに見かけない「長期熟成 古八幡(いにしえはちまん)」アルコール37度は、720mlで、15,000円。

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高良酒造有限会社
住所:鹿児島県南九州市川辺町宮4340
電話:0993-56-0181

 

4位:伊佐焼酎 伊佐美

伊佐焼酎「伊佐美」

伊佐焼酎「伊佐美」

芋焼酎でも薩摩焼酎でもない「伊佐焼酎」と銘打つ。「伊佐美」の蔵がある鹿児島県伊佐市大口は、米焼酎の故郷、熊本県球磨地方に隣接し、古くから伊佐地方と呼ばれた土地。鹿児島といえども比較的冷涼な気候風土を持つ場所だ。ここで「伊佐美」ブランド一本で勝負するのが、創業明治32年の甲斐商店だ。

「伊佐美」は、プレミア芋焼酎としては草分け的存在で、25年程前にはすでに幻の焼酎といわれ、一部の熱狂的ファンに愛され続けている。焼酎は白麹が主流のときより黒麹仕込みを行っていたことも人気の秘密だろう。
伊佐焼酎 伊佐美
 
味わいは、まさに芋焼酎らしい素朴な風味。なめらかさがあり一見優しい印象だが、実は骨太の骨格しっかりタイプ。黒麹仕込みからくるものか。歴史深い焼酎の里「伊佐」の土地のパワーを感じさせてくれるレトロなラベルからもイメージされるように、洗練されすぎず、昔ながらの味わいを残したところに伊佐美の良さがあるのかもしれない。お燗がいい。

正規価格は、1800mlで1,800円前後だが、プレミア価格で、1800ml、5,000円前後。

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合資会社甲斐商店
住所:鹿児島県伊佐市大口篠原2472番地
電話:0995-22-0548

 

3位:かめ壺焼酎 村尾

かめ壺焼酎 村尾
 
鹿児島三大河川の一つ川内川が流れる鹿児島県薩摩川内市において、創業明治35年の村尾酒造。かの西郷隆盛が愛した焼酎としても知られる。「薩摩茶屋」が主要銘柄。

3代目当主であり、焼酎造りの天才といわれる村尾寿彦氏が、原料調達から、仕込み、蒸留、配達まですべてを1人で賄っている。ゆえにその生産量は限られ、おのずと手に入れにくい焼酎となった。黄金千貫と白豊を使用、黒麹仕込みで造られた、落ち着いた香りと洗練されたなかにも芋本来の自然な甘さやまろやかさを合わせもつタイプ。アフターに芋らしい甘いフレーヴァーが心地よく残る。お燗がいいか。これは、数年前の利き酒の印象だが、常に味わいは変化と向上を続けている。「森伊蔵」「魔王」とで「3M」と呼ばれる。

正規価格は2,300円前後だが、市場価格は、1800mlで13,000円~20,000円程度。900mlサイズもあるがあまり出回っていないようだで10,000円~15,000円程度。ANA専用限定品720mlもある。青の箔文字が印象的な750mlもある。

村尾酒造合資会社
住所:鹿児島県薩摩川内市陽成町8393
電話:0996-30-0706
 

2位:名門の粋 魔王

名門の粋「魔王」

名門の粋「魔王」

「天使を誘惑し、魔界の王へ最高の酒を調達・献上する悪魔たちによってもたらされた特別なお酒」が命名の由来だとか。このしゃれたインパクトあるネーミングで爆発的人気を呼び起こしたのは、鹿児島県大隈半島最南端、錦江町の蔵「白玉醸造」だ。創業は、明治37年。スタンダート商品の芋焼酎は「白玉の露」だ。ほか、麦の「元老院」、米の「天誅」、さらには芋の「火の水」などの銘柄もある。
名門の粋 魔王
 
人気の要因は、なにより印象的な名前のほか、芋臭さを一切消したすっきりした味わいだろう。芋焼酎独特の甘い風味は少なく、思いのほかドライでシャープ。後味も「キレ」やアルコール感が感じられ、一般の芋焼酎のような甘い余韻は少ない。芋の甘い香りが好きな人にはむしろ「白玉の露」がいいのかも。ラベルにある「名門の粋」は、昔は「長期熟成酒」と書かれていたとか。いまは熟成していないのか……。「森伊蔵」「村尾」と「3M」のひとつ。

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「魔王」だけの販売は少なく、オリジナル桐箱入りで1800ml、15,000円前後。720mlで8,000円前後。箱なしが、1800mlで13,000円前後。720mlで6,000円前後。ネット上では各酒販店が作る「他の銘柄との抱き合わせセット販売」も多い。探せば、「いにしえのかめ」と命名された長期熟成酒もある。これはなんとネット価格1800ml、30万円也!

白玉醸造合名会社
住所:鹿児島県肝属郡錦江町城元618-6
電話:0994-22-0030

 

1位:かめ壺焼酎 森伊蔵

かめ壺焼酎undefined森伊蔵

かめ壺焼酎 森伊蔵

鹿児島県、錦江湾を一望する垂水市に位置する森伊蔵酒造。創業は明治18年。「魔王」「村尾」とともに「3M」と呼ばれる。初リリースは昭和63年。定価は2,500円程度だが、お酒屋さんやネット上では、一升瓶30,000円~40,000円の値がつくし、料飲店価格はいわば天井知らず。いや、お金があってもモノがなくてなかなか買えないというのがこの「森伊蔵」なのだ。幻中の幻で、今や誰もが認めるプレミア焼酎の王様となった。焼酎を飲まない人でさえ、この「森伊蔵」という名前を知っている。やはりここは第1位。
 
楽酔喜酒 森伊蔵

楽酔喜酒 森伊蔵

福井のコシヒカリと低農薬の黄金千貫と垂水の名水を使用し、合掌造りの伝統蔵で、かめ壺を使い丁寧に仕込む。最も名前を知られているが、味わいを語られることはほとんどない焼酎の代表でもある。

ガイド個人の感想は、心地いい甘い香り、最初の口当たりは非常になめらかで洗練されている。中盤からはやわらかい旨味と骨格がはっきりと感じられ全体のバランスがすばらしい。すっきりとした印象のわりには後味が長いところが意外。ブラインドで飲んでもおいしかったというのが率直な感想。もちろん、ボトルを横にして飲んだら、もっとおいしいけれどね。

「極上森伊蔵」は、さらになめらかで少しとろみがある感じ。より骨太だが、角が取れた印象で、艶っぽさがある。出来れば氷やお湯などで薄めずストレートで飲みたい。

購入方法は、1800mlは電話申し込みのうえ抽選。720mlは全国の高島屋各店にて販売。JAL国際線機内限定販売ボトル720mlは文字通りJAL機内の販売だが、現在調整中の模様。長期洞窟熟成の「極上森伊蔵」720mlは、高島屋各店と鹿児島山形屋にて販売。12月に1回のみ発売の「楽酔喜酒 森伊蔵」600mlは、高島屋各店と山形屋にて申し込み抽選販売、JAL機内限定販売(事前予約)。

公式サイト:森伊蔵

有限会社森伊蔵酒造
住所:鹿児島県垂水市牛根境1337
電話:0994-36-2063

※商品価格は変動しますのでご了承ください(データは2010年6月時点のもの)

 

幻の焼酎をさらに美味しく!芋焼酎の美味しい飲み方

焼酎初心者や焼酎の香りが気になるという方には「オン・ザ・ロック」がおすすめ。ロックグラスに大きめの氷を入れてストレートでそそぐ。冷たくしすぎると焼酎の風味が感じられなくなってしまうので、溶けにくいおいしい氷を使って飲みたいもの。

好みの焼酎をじっくり楽しむなら、やっぱ「お燗」。ストレートの焼酎、もしくは水で割った焼酎を直火にかけゆっくりと温めて飲むものだ。前もって水と焼酎を割っておいて、それをお燗にするのがおすすめ。最もおいしいのは前日割り。ちょうどいい具合にまろみが出る。それを「ぢょか」を使って弱火でじっくり温める。表面が温かくなったら飲み頃。ヌル燗がいいのだ。

風味が増しておいしいのは「お湯割り」。先にお湯を入れてから焼酎をそそぐ。それにより、お湯の温度が下がり、熱すぎないお湯割りができる。またお湯と焼酎の温度差で、自然に混ざりやすくなるのだ。小ぶりのグラスや湯呑みタイプの酒器で少量ずつつくることがポイントである。「焼酎:お湯=6:4」の割合で飲むのがおすすめ。日本酒と同じくらいのアルコール度数になり、食事にあわせて飲むにはちょうどいい。

また「ソーダ割り」は乾杯にいい。爽快で軽い焼酎をソーダで割って、レモンやライム、ミントの葉などを浮かべれば、より華やかに楽しめる。
焼酎のソーダ割り

焼酎をソーダで割って、柑橘系やミントの葉などをプラスして


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