フレンチ/東京のビストロ

ダール・ロワゾー(三軒茶屋)

世田谷通りと246に挟まれた「異質」な飲食街でのどかな光を放つダールロワゾー。クスクス好きにはたまらない空間だが、リニューアル後は料理やワインも充実。カウンター席を狙いたい。

嶋 啓祐

執筆者:嶋 啓祐

フレンチガイド

大好物のクスクス

私にとってクスクスはフレンチのひとつ。それも大好きだ、ほんとうに。
クスクスは長い歴史の中、モロッコとフランスとの関わりの中で海を渡り、様々な要素を取り入れ、フランス人社会の日常食へとなっていった。
クスクス

大好きな野菜のクスクス

ダール・ロワゾーは店主、石崎まみ氏のフランス好きが好転し、クスクスを主体に誕生したフレンチ風モロッコ料理店。店主ひとりで切り盛りしていたオープン当時から数年を経て、2010年4月にクスクスリー・ロワゾーを改め、ダール・ロワゾーへとリニューアルオープンを果たす。オープンしてから3倍近く増えたメニュー。モロッコワイン、さらに自然派を中心としたワインが数種類あり、グラスから注文できる気軽さが日常使いにはぴったりだ。
クスクス

カウンターの中で調理中の店主。知識とこだわりと美しさを兼ね備えた料理人だ

モロッコ料理といえば、クスクスのほかにタジン鍋を使った料理がある。ヘルシーな蒸し料理ブームに伴い、家庭でも手軽に蒸し料理ができるタジン鍋が注目されて日本でも知名度が高まった。モロッコから店主自らが持ち帰った鍋に野菜と肉を敷き詰め、弱火でじっくり火を入れる。円錐形の縦に細くなっている蓋は上部で対流を起こりにくくし、水蒸気が水滴となり食材に滴り落ちる原理。水を使わない蒸し焼き調理は香りや風味を食材に残したまま料理へと仕上がっていく。

時間がかかるため、他の鍋で食材を調理し、タジン鍋に移し替える店もある中、ロワゾーで食べるタジン鍋は正統な作り方でまさに本格的。そこにアクセントとしてアリサを。唐辛子ペーストを主としたモロッコ料理には欠かせない香辛調味料だ。市販品もあるが、ロワゾーのアリサは自家製で季節によって配合を変えている。ゆっくりと時間をかけて調理され、食材からのうま味と甘味たっぷりなモロッコ料理に刺激的な辛さが添えられると体内がぐぐっと温かくなる。どの料理にも欠かせない、日本でいう味噌や醤油のような存在。最後は鍋底のうま味たちを自家製のモロッコパンでふき取って食べる醍醐味も格別だ。
クスクス

野菜の旨味が蒸すことによって増してくる


そしてもうひとつ、タンジーヤという料理を紹介したい。それは上等の壺蒸し料理である。現地では陶器製の壺に肉や野菜、香辛料を詰め、モスクの大浴場ハンマームに行くときに共に持っていく。炉の灰に埋め、大浴場でくつろいでいる間に蒸し煮をするというなんとも効率的で簡単な調理方法。低温で長い時間を有し、水分を使わないタンジーヤは水が貴重な土地柄で生まれた現地の知恵ある料理だ。ロワゾーでは火鉢でハンマームの炉を再現。壺を火鉢にかけてから9時間後に出来上がる。シンプルな料理なのだが時間がかかるため、2日前までの予約が必要だ。

カウンターとテーブル合わせて15席ほどの空間にブルーと白のタイルが鮮明で、天井から下がるランプがどことなく上品な趣。決して広くはない店内だが、調和した落ち着きがある。装飾も料理もきらりと美しい。
三軒茶屋

居酒屋が多い中、センスの良さが光る外観。

自らモロッコへ買い付けに行く行動的で通な店主の人柄に魅了されて常連になる人も多いと聞く。「住みたい町」ランキングにも登場する三軒茶屋の駅から徒歩30秒。その先にたたずむモロッコスタイルに異国の情緒を味わいながらのひと時を過ごすのは実に楽しい。

ダール・ロワゾー(三軒茶屋)
東京都世田谷区三軒茶屋2-13-17
東急田園都市線三軒茶屋駅 世田谷通り口よりすぐ。サーティーワンアイスクリームが目印。
電話番号 03-3418-8603
営業時間
月~土 12:00~15:00
月~土 18:00~翌0:00
日曜定休
予約が望ましい。
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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※メニューや料金などのデータは、取材時または記事公開時点での内容です。

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