夢見る少女じゃ終わらない! 世界的な動物行動学者の伝記絵本
「大きくなったら何になりたい?」と尋ねられ、しばらく考えてから「パンダになりたい!」と叫んだ女の子がいました。ガイドの娘です…… けれど、「幼い子どもの夢なんて、その程度のものさ」などと、侮ってはいけません。幼い頃から「動物と仲良くなって、動物の為に役立つ仕事をしたい」と考え、その夢を叶えて世界的な動物行動学者になった少女がいます。その少女こそ、世界で初めてチンパンジーが道具を使うことを発見したジェ-ン・グドール博士です。今回は、博士の少女時代の実話に基づいた夢いっぱいの絵本をご紹介します。
動物が大好きなおてんば娘が「夢見たこと」と「実践したこと」
ジェーンの1番の友だちは、お父さんにもらったチンパンジーのぬいぐるみ、ジュビリーです。ジェーンは、いつもジュビリーと一緒。ジュビリーをお供に外へ出かけては、動物たちの様子を観察するのが楽しみなのです。いつしかジェーンは「アフリカに渡り、動物たちと仲良くなって、困っている動物を助けたい」と考えるようになりました。
さて、そんなジェーンの夢がどうなったのか…… 結末をお話する前に、ちょっと変わっているけれど、とても魅力的な本書の構成について触れておきましょう。本書では、見開きの右側のページには、お転婆だけれどとても賢そうな女の子(もちろんジェーンのことですとも!)と、たくさんの愛らしい動物たちが、ストーリーの流れに沿って丁寧に描かれています。
自然をモチーフにした図版のイメージ
右ページを中心に、普通の絵本として本書を楽しむも良し。全てのページを味わうことで、鑑賞の幅を広げ、ストーリーとは別の楽しみを得るも良し。どちらも可能なように工夫された構成です。しかも、巻末には、12歳のジェーンが作った自然愛好会の会報が掲載されています。絵やクイズがてんこもりの内容ですから、こちらもお楽しみに。
少女の夢が叶う瞬間に立ち会える絵本
それでは、ジェーンの夢にお話を戻しましょう。幸せなことに、ジェーンが長い間思い描いた夢は叶いました。その夢が叶う瞬間をとらえた写真が、このお話のラストに登場します。けれど、その写真は、みなさんが想像するものとは少し違うかもしれません。いったい、どんな写真なのでしょう?学者として表彰される写真でしょうか? それとも、自然保護を訴えて演説などをしている写真なのでしょうか?いいえ、そうではありません。地位や名誉とは関係なく、動物好きの少女が長い間描き続けた純粋な夢が、現実となった瞬間の写真です。それは、ジュビリーがジェーンを手助けしたとしか思えないような心温まるシーンなのです。 夢を叶えるため、たゆまぬ努力を重ねた少女への何よりの贈り物ともいえるその光景が、読者の心に静かな感動をよびおこします。
【書籍DATA】
パトリック・マクドネル:作 なかがわちひろ:訳
価格:1575円
発売日:2011/9/21
出版社:あすなろ書房
推奨年齢:4~5歳くらいから
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