「あうん」のサポート体制を作ろう
イザというときに援助(支援)してくれる人が近くにいることほど安心なことはありません。ご近所付き合いや自治会活動、勉強会、趣味の会・ボランティア活動などを通していろいろな人と交流し、あうんの呼吸で助け合える「人の輪」をじっくりと作りましょう。これはお金と同等、いえそれよりも重要で、老後のセーフティーネットの要となるものです。この「人の輪」があれば、少々身体に問題を抱えても、独りになっても、自宅に住み続けることが可能になります。
また、支援に対する実費は当然ですが、「気遣い」「おすそ分け」などで時には感謝の気持ちを表したいもの。生活費とは別にそのための資金を準備しておくと、気持ちよく援助を受けることができるのではないでしょうか。
「人の輪」を作って維持するには、誠実さや頼り過ぎない節度ある態度、適切な感謝の表現が何より必要だと思います。
遺言書を作ろう
子供のいない夫婦において、稼ぎ手だった夫が亡くなった場合、相続トラブルが発生することは少なくありません。相続財産が不動産(名義は夫)と妻の老後をまかなう程度の金融資産というときに、夫の両親(祖父母)や兄弟姉妹が相続権を主張したがために不動産を売却して対応した、という悲しい例をいくつも知っています。「DINKSの老後のお金の考え方」でも紹介しましたが、遺産の相続権は配偶者だけでなく親(祖父母)、兄弟姉妹も持っています。
あまり交流のない義理の両親(祖父母)や兄弟姉妹が遠慮なく相続の権利を主張することも。相続内容によっては、なかなか相続できない事態に発展することもあります。配偶者が相続で苦労しないように遺言書(例えば「○○は両親に相続させる」「配偶者にすべてを相続させる」)を作成して、親(祖父母)や兄弟姉妹の相続権を制限する配慮が望まれます。
なお、子のない夫婦で配偶者が死亡した場合の相続権者と相続割合は次の通りです。
・親(祖父母)が存命:配偶者が2/3、親が1/3(遺留分は1/6)
・親が死亡:配偶者3/4、兄弟姉妹1/4(遺留分なし)
※遺留分とは、法定相続人が相続できる最低限の割合のこと。兄弟姉妹には遺留分はない
不動産をプレゼントしよう
夫の名義になっている不動産を妻にプレゼントする際、威力を発揮するのが、「夫婦間で居住用の不動産を贈与した時の配偶者控除の特例」です。婚姻期間の長い夫婦が利用できる生前贈与の中でもメリットの多い制度です。1 特例の概要
婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、居住用不動産又は居住用不動産を取得するための金銭の贈与が行われた場合、基礎控除110万円のほかに最高2,000万円まで控除(配偶者控除)できるという特例です。
2 特例を受けるための適用要件
(1)夫婦の婚姻期間が20年を過ぎた後に贈与が行われたこと
(2)配偶者から贈与された財産が、自分が住むための居住用不動産であること又は居住用不動産を取得するための金銭であること
(3)贈与を受けた年の翌年3月15日までに、贈与により取得した国内の居住用不動産又は贈与を受けた金銭で取得した国内の居住用不動産に、贈与を受けた者が現実に住んでおり、その後も引き続き住む見込みであること
(注)配偶者控除は同じ配偶者からの贈与については一生に一度しか適用を受けることができません。
(国税庁ホームページより引用)
※婚姻期間は婚姻の届出の日から起算する
義理でなく、本当に大事なお付き合いにお金を使う
子供のいない夫婦の老後の楽しさは、リタイア後の夫の自立度によって決まります。夫婦一緒に楽しむ時間とそれぞれが自由に楽しむ時間を分け、そのために必要なお小遣いはキチンと支出して、それぞれが「人の輪」をしっかりと作り維持していきましょう。老後に必要なのは親戚や兄弟姉妹とは限りません。義理のお付き合いはリタイアとともに捨て、本当に必要な人・支え合える人との交流に大切なお金を使いたいものです。
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