中尺・長尺のメリットとは?
2011年全米プロ覇者キーガン・ブラッドリーが使用したPING「G5i Craz-E」。中尺と大型マレット型ヘッドとの相性は良好
中尺パターは、グリップエンドをお腹で固定することで、ストロークが安定します。パターを支える点が一つ増えることで、肩の大きな筋肉を使う感覚や、みぞおちを左右に動かしながらストロークする感覚が得やすくなります。
手や前腕のねじれや返しなど、パッティングに悪影響を及ぼす動きを抑制し、大きな筋肉でのストロークが体感しやすいわけです。
中尺には、通常のパターに近いアドレスでプレーできるメリットがあり、スイッチしやすいのも特徴です。事実、中尺と通常レングスのパターをかわるがわる使用しているツアープロもいます。
そして、クラブのやさしさを示す慣性モーメントが大きいことも特徴です。
小ぶりなヘッドのパターよりも大型ヘッドのマレット型パターの方が慣性モーメントが大きく、ミスヒットに強く直進性が高くなりますが、同様の効果があります。
クラブ設計家の竹林隆光さんが、「長尺パターは、R&Aが禁止にしてもいいくらい」と語ったエピソードは有名です。これも長尺パターの非常に大きな慣性モーメントを念頭に置いた言葉です。総重量が1kg前後になる長尺パターでは、通常パターとは比べ物にならないほど、大きな慣性モーメントになります。
余談ですが、今期、片山晋呉プロが、「PING Doc17」というフェース長が17cmを超える超大型のパターヘッドを長尺シャフトにしてプレーしています。大型ヘッドと長尺の組み合わせ、これ以上の慣性モーメントを獲得するのは難しいかもしれません。
前傾が浅くなるため、腰への負担が少なく長時間の練習も行いやすくなるメリットもあります。
そもそも使い方もこれと決まっているわけではなく、2009年マスターズ覇者のアンヘル・カブレラの様に短めの中尺パター(39インチ)をお腹につけないプロや、アゴや腕で固定する選手もいるようです。
中尺や長尺パターのデメリットをあげるとするならば、操作性が出しにくい事。慣性モーメントが大きくなると、それだけヘッドの細やかなコントロールは難しくなります。特に距離感を出すのは難しくなり、一般的なアマチュアゴルファーであれば長尺パターで距離感を出せるようになるには、それなりの練習量が必要になるでしょう。
今年になるまで、中尺、長尺パターのメジャー大会での勝者がいなかったのもその辺に要因があるのかもしれません。厳しいコースセッティングに仕上げられるメジャーの舞台では、グリーンのスピードも大変速く、微妙なタッチを要求されます。
もっか、抜群の勝率をあげている中尺、長尺パターですが、厳しいグリーンの速いセッティングの中でどれだけ活躍できるかは、今後注目していきたいところです。ガイドとしては、微妙な距離感を出せる優れた使い手は、今後どんどん現れていくのではないかと考えています。
中尺、長尺化は、特性上、フェースの開閉がしやすいL字型やピン型のパターは向きません。マレット型と相性が良く、大型ヘッドのものも良く採用されます。センターシャフトとの相性も抜群で、T字型やマレット型のセンターシャフトモデルも多いです。パターを横向きに持った時にフェースが上を向く、いわゆるフェースバランスが良いようです。
市販されているもののほとんどがそうしたモデルですが、工房などで自作する場合などには、ヘッドとの相性を注意する必要があるでしょう。
以上のような特徴を、改めてまとめてみます。
中尺、長尺パターは軌道のブレが少なく、直進性が高くなりメリットが大きい。今後さらに流行する可能性は高いでしょう。ただ距離感を出すには練習が必要。モデル選びでは、ヘッド形状にも注意します。
現在は、中尺専用のカラーグリップなども登場し、以前よりもずっと試しやすくなっていると思います。パッティングに悩むゴルファー、特に前腕を使いすぎるゴルファーは、ぜひ試してみたいパターだと思います。