どんな法律でも、それが守られなければ意味がありません。そのため宅地建物取引業法でも、違反者に対する監督処分だけでなく、違反による影響の大きなものについては懲役や罰金など、罰則規定が設けられています。

30回あまりにわたって解説をしてきた宅地建物取引業法詳説〔売買編〕の最終回は、第八章に規定された「罰則」(第79条~第86条)のうち、消費者との関わりがあるものを中心に、その内容を整理しておくことにしましょう。


罰則=損害賠償ではない!

規定の内容に入る前に理解しておきたいのは、罰則規定はあくまでも違反者に対する処分であって、違反により損害を受けた消費者への損害賠償に直結するものではないということです。

ユーザーの方から「仲介業者から○○のような行為をされたが、これは宅建業法違反ではないか。違反なら当然に損害賠償を請求できるのではないか」といった内容のご質問をいただくこともありますが、残念ながら損害賠償に関する基準などは宅建業法に規定されていません。

しかしながら、宅地建物取引業者の違反行為が原因で消費者が損害を被ったとき、その違反行為が発覚して処分されることを避けるために損害賠償の交渉に応じる、ということは十分に考えられる話です。

なお、宅地建物取引業法に定められた数多くの規定のうちには、違反をしても罰則の対象にならないものがいくつかあります。しかし、罰則のない規定は違反をしても大丈夫などということはなく、ほとんどは前回説明した監督処分による指示や業務停止などの対象に含まれています。


罰則の種類と該当事項

宅地建物取引業者の従業員などが宅地建物取引業に関して罰則の対象となる違反行為をしたときには、その従業員などが罰せられるほか、従業員などを雇用している宅地建物取引業者も同様に罰せられることになります。

(リンクはそれぞれの解説ページです)

3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、またはこれらの併科

  不正の手段による宅地建物取引業免許の取得
  無免許営業
  名義貸し
  業務停止の命令に対する違反

宅地建物取引業者の従業員など(代表者等も含む)が、不正の手段によって別途に宅地建物取引業の免許を受けたり、無免許営業をしたりしたときには、その行為者が罰せられるだけでなく、十分な監督状況が証明できない場合にはその法人に対して1億円以下の罰金刑が科せられることがあります。

2年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、またはこれらの併科

  重要な事項について故意に事実を告げず、または不実のことを告げる行為(契約締結の勧誘や、申込みの撤回・解除などを妨げる目的のとき)

1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金、またはこれらの併科

  不当に高額の報酬を要求する行為

6か月以下の懲役もしくは100万円以下の罰金、またはこれらの併科

  営業保証金の供託などが終わったことを届け出る前の営業
  誇大広告の禁止違反
  不当な履行遅延の禁止違反
  手付の貸与などによる契約締結の誘引行為

100万円以下の罰金

  免許申請書などに虚偽の記載をして提出した者
  無免許や名義貸しによる広告など
  宅地建物取引主任者の設置義務違反
  上限額を超えた報酬の受領

50万円以下の罰金

  商号、所在地、代表者、役員、専任の取引主任者などの変更の届出義務違反または虚偽の届出
  業務を行なう場所についての届出義務違反または虚偽の届出
  契約内容を記載した書面の交付義務違反
  報酬の額の掲示義務違反
  従業者証明書の携帯義務違反
  免許標識の掲示義務違反
  秘密を守る義務違反
  従業者名簿の不備、必須項目の記載漏れ、虚偽記載
  取引成立台帳など規定された帳簿の不備、必須項目の記載漏れ、虚偽記載
  監督官庁の指示に基づく報告への不対応、虚偽報告、検査の拒絶・妨害・忌避など

このうち「秘密を守る義務違反」については、秘密を洩らした個人だけが罰則の対象となる(業者への罰則はない)ほか、その前提として秘密を洩らされた側からの告訴が要件となります。

10万円以下の過料

  重要事項説明をするときの取引主任者証不提示(宅地建物取引主任者個人のみが罰則対象)


実際に罰則を受けるかどうかは別として、平然と違反行為をするような宅地建物取引業者とは取引をしないことが大切ですね。


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