宅地建物取引業法詳説〔売買編〕の第30回は、第48条(証明書の携帯等)、第49条(帳簿の備付け)および第50条(標識の掲示等)についてみていくことにしましょう。

 (証明書の携帯等)
第48条  宅地建物取引業者は、国土交通省令の定めるところにより、従業者に、その従業者であることを証する証明書を携帯させなければ、その者をその業務に従事させてはならない。
 従業者は、取引の関係者の請求があつたときは、前項の証明書を提示しなければならない。
 宅地建物取引業者は、国土交通省令で定めるところにより、その事務所ごとに、従業者名簿を備え、従業者の氏名、住所、第一項の証明書の番号その他国土交通省令で定める事項を記載しなければならない。
 宅地建物取引業者は、取引の関係者から請求があつたときは、前項の従業者名簿をその者の閲覧に供しなければならない。
 
 (帳簿の備付け)
第49条  宅地建物取引業者は、国土交通省令の定めるところにより、その事務所ごとに、その業務に関する帳簿を備え、宅地建物取引業に関し取引のあつたつど、その年月日、その取引に係る宅地又は建物の所在及び面積その他国土交通省令で定める事項を記載しなければならない。
 
 (標識の掲示等)
第50条  宅地建物取引業者は、事務所等及び事務所等以外の国土交通省令で定めるその業務を行う場所ごとに、公衆の見やすい場所に、国土交通省令で定める標識を掲げなければならない。
 宅地建物取引業者は、国土交通省令の定めるところにより、あらかじめ、第十五条第一項の国土交通省令で定める場所について所在地、業務内容、業務を行う期間及び専任の取引主任者の氏名を免許を受けた国土交通大臣又は都道府県知事及びその所在地を管轄する都道府県知事に届け出なければならない。


従業者は証明書を常に携帯しなければならないが…

宅地建物取引業者の従業者であることを証明する方法として、以前は記章(徽章=バッジ)やユニホームの着用によることも認められていましたが、昭和63年の法改正により「従業者証明書」に統一されました。

それから20年あまりが経過し、会社から「従業者証明書」を渡されていない従業者はほとんどいないと思いたいところですが、実際にこの証明書を活用する機会はなかなかないようです。

同業者同士で「従業者証明書」を見せ合うことはありませんし、お客様はその存在自体をあまり知りませんから「従業者証明書を見せてくれ」ということも滅多にないでしょう。そのため、会社から与えられた「従業者証明書」をどこかに置き忘れ、そのことにも気付かないままで証明書の携帯を怠っている従業者は意外と多いかもしれません。

営業担当者などにさりげなく「従業者証明書って見せてくれませんか」と尋ねれば、その会社の姿勢を推し量る一つの材料になる場合もあるでしょう。もし証明書を携帯していなければ、管理が細かいところにまで行き届いていないことも考えられます。

なお、「従業者証明書」は一般の従業者だけでなく、会社の代表者(社長)、役員(常勤か非常勤かを問わない)、単に一時的に事務の補助をするだけの者なども携帯しなければならないことになっています。


従業者にプライバシーはない?

第48条第3項で備付けが義務付けられている「従業者名簿」には、氏名、職務内容、従業者証明書の番号、取引主任者であるかどうかの別、入社年月日(および退職年月日)のほか、個人の住所、生年月日も記載されることになっています。

社外の人(取引の関係者)が閲覧を求めてくることは、実際のところ滅多にないでしょうが、個人情報も筒抜けになる制度のため、とくに女性社員は注意が必要かもしれません。住所などを知られたくない同僚男性社員に簡単に見られてしまうこともあるでしょう。

パソコンなど電子媒体による名簿の管理も認められているほか、退職後も最低10年間は情報が保存されることになっています。


取引台帳の備付けが義務

第49条で備付けが義務付けられている帳簿とは、一般に「取引台帳」または「取引成立台帳」といわれるものです。

決められた項目を満たしていれば様式は自由とされていますが、契約書などのコピーをまとめて綴じておくだけでは帳簿として認められません。実際には市販の用紙、または業界団体が配布する様式を使用している宅地建物取引業者が大半でしょう。

取引台帳は各事業年度の末日をもって閉鎖するとともに、閉鎖後5年間はこれを保存しなければならないことになっています。また、すぐにプリントできるなどの要件を満たせば、パソコンなどで管理することも認められています。


宅地建物取引業者票の掲示義務

第50条で掲示が義務付けられている標識とは、一般に「宅地建物取引業者票」といわれるもので、宅地建物取引業者の免許証とは異なります。

この標識を掲示しなければならないのは、事務所のほか、事務所以外で継続的に業務を行なうことができる施設を有する場所、10区画以上の一団の宅地または10戸以上の一団の建物の分譲を行なう場合の現地(売主)、10区画以上の一団の宅地または10戸以上の一団の建物の分譲を行なう場合の案内所(売主、代理、媒介)、業務に関して展示会その他これに類する催しを行なう場合の実施場所となっていて、それぞれの態様に応じて6種類の様式が定められています。

一般の人がチェックをするときには、宅地建物取引業者の名称のほか、免許証番号、免許の有効期間、代表者氏名、専任の取引主任者の氏名、本店所在地などが書かれた標識が掲げられているかどうかを見れば十分でしょう。


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