不動産売買の法律・制度/宅地建物取引業法詳説

宅地建物取引業法詳説 〔売買編〕 -7-

宅地建物取引業法のなかから「一般消費者も知っておいたほうがよいこと」などをピックアップして、順に詳しく解説するシリーズ。第7回は「宅地建物取引主任者の設置」について。

執筆者:平野 雅之


宅地建物取引業法詳説〔売買編〕の第7回は、第15条(取引主任者の設置)についてみていくことにしましょう。

 (取引主任者の設置)
第15条  宅地建物取引業者は、その事務所その他国土交通省令で定める場所(以下この条及び第五十条第一項において「事務所等」という。)ごとに、事務所等の規模、業務内容等を考慮して国土交通省令で定める数の成年者である専任の取引主任者(第二十二条の二第一項の宅地建物取引主任者証の交付を受けた者をいう。以下同じ。)を置かなければならない。
 前項の場合において、宅地建物取引業者(法人である場合においては、その役員(業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずる者をいう。))が取引主任者であるときは、その者が自ら主として業務に従事する事務所等については、その者は、その事務所等に置かれる成年者である専任の取引主任者とみなす。
 宅地建物取引業者は、第一項の規定に抵触する事務所等を開設してはならず、既存の事務所等が同項の規定に抵触するに至ったときは、二週間以内に、同項の規定に適合させるため必要な措置を執らなければならない。
 
  (試験~受験手数料)
第16条~第16条の19  (宅地建物取引主任者資格試験およびその指定試験機関などに関することなので省略します)

専任の宅地建物取引主任者とは?

宅地建物取引業者は、その事務所(本店、支店など)ごとに、業務に従事する者5人に1人以上の割合で “専任の” 宅地建物取引主任者を置かなければなりません(宅地建物取引業法施行規則第6条の3)。

専任の宅地建物取引主任者とは、宅地建物取引主任者のうち、成年者で、かつ専ら(もっぱら)宅地建物取引業に従事できる状態にある者のことで、ひらたく言えば「常勤の宅地建物取引主任者」です。宅地建物取引業以外の業種を兼業している法人などでは、常勤していても専任とは認められない場合もあります。

  「宅地建物取引主任者=専任の宅地建物取引主任者」ではありません。人数の要件を満たしていれば、宅地建物取引業者に勤務していても「専任」には就任しない宅地建物取引主任者もいます。

「5人に1人以上」を裏返せば、「5人に4人まで」は不動産に関する知識の希薄な者が営業として従事することも可能です。消費者の立場からすれば、せめて2人に1人ぐらい、できれば全員に宅地建物取引主任者の資格を持っていてほしいところではないでしょうか。「社員の全員が有資格者」であることをウリにしている宅地建物取引業者もあるようです。

なお、専業の宅地建物取引業者であれば、業務に従事する者の人数には代表者、役員(非常勤を除く)、総務や経理などの事務職、受付、秘書、運転手など、すべての従業員が含まれます(取引に関与しない臨時職員は除かれます)。

他の業種を兼業する宅地建物取引業者の場合には、宅地建物取引業の業務の比重が小さい役員や、宅地建物取引業に関する業務に従事しない者は除かれます。ただし、宅地建物取引業を主として営んでいれば、一般管理部門の従業員も人数に含まれることになっています。

モデルルームなどの場合

宅地建物取引業者の事務所(本店、支店など)以外でも、売買契約の締結をしたり、購入の申し込み(抽選の申し込みなどを含む)を受けたりすることのできる一定の場所には、1人以上(人数割合の規定はなし)の専任の宅地建物取引主任者を置かなければなりません。

〔専任の宅地建物取引主任者を置く場所〕

  事務所以外で、継続的に業務を行なうことができる施設を有する出張所など・・・特定の物件のみを取り扱い、契約締結権限を有する者がいない施設(契約締結権限を有する者がいて不特定の物件を取り扱うなら、事務所として5人に1人以上の専任の宅地建物取引主任者を置くことになります)
     
  10区画以上の一団の宅地、または10戸以上の一団の建物の分譲を行なう場合の案内所(新築マンションのモデルルームなど)・・・売主業者または代理、媒介業者が専任の宅地建物取引主任者を置く
     
  不動産フェアや住み替え相談会など、展示会やこれに類する催しを実施する場合の会場

また、別荘の現地案内所などで週末や特定の曜日にだけ開かれ、申し込みの受付や契約の締結を行なう場所にも専任の宅地建物取引主任者を置かなければなりません。

なお、複数の宅地建物取引業者が「同一の物件」を共同で販売するモデルルームなどでは、いずれかの宅地建物取引業者が1人以上の専任の宅地建物取引主任者を置けばよいことになっています。ただし、同一会場の不動産フェアなどでも、宅地建物取引業者によって取り扱い物件が異なれば、それぞれの宅地建物取引業者ごとに専任の宅地建物取引主任者を置かなければなりません。

大半の宅地建物取引業者は零細企業?

専任の宅地建物取引主任者に就任した者には転職の自由がない、などということはありません。当然ながら専任の宅地建物取引主任者が退職することもあり得ます。

専任の宅地建物取引主任者の退職によって「5人に1人以上」の要件を満たさなくなった場合には、2週間以内に代わりの宅地建物取引主任者を見つけて「専任」に就任させなければなりませんが、他の従業員が宅地建物取引主任者の資格を持っていないかぎり、現実的にはほとんど困難です。

そのため、代表者が宅地建物取引主任者の資格を持っていて専任になり、社員は(代表者や役員を含めて)5人以下、あるいは中核に宅地建物取引主任者が2人いて社員は10人以下で、どんなに忙しくても社員は増やせないという宅地建物取引業者が大半でしょう。全国に約13万(個人事業者を含む)の宅地建物取引業者があるものの、社員数の多い大手業者や中堅業者はほんの一部です。

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