キンガ姫の岩塩坑発見伝説
聖アントニー礼拝堂に設置されたシャンデリア。これも岩塩で造られている ©牧哲雄
泡のように固まった塩の結晶 ©牧哲雄
仕方なくポーランドに嫁いできたキンガ姫は、ヴィエリチカのある場所にとても惹かれてしまう。そして部下に「ここに井戸を掘りなさい」と命じる。地面を掘り進めると、出てきたのは水ではなく塩と捨てたはずの指輪。部下は驚喜した。当時塩はとても貴重なもので、塩が手に入らないためにポーランドの人々はとても困っていたのだ。
キンガ姫はポーランド王妃になったあと貧者や病人を助け、王の死後は財産を売って皆に分け与え、修道院に入って一生を過ごす。こうした数々の伝説からやがて姫は福者や聖者として崇められるようになった。
ヴィエリチカ岩塩坑のハイライト「聖キンガ礼拝堂」
全長55m・幅17m・高さ12mを誇る聖キンガ礼拝堂。礼拝堂自体は17世紀に設置されていたが、現在の姿になったのは1927年のこと ©牧哲雄
こちらは17世紀に造られた聖アントニー礼拝堂。岩塩坑内部にある最古の礼拝堂だ ©牧哲雄
これらはいずれも坑夫たちによる作品。であるにもかかわらず、とても精巧でリアルだ。
おもしろいのが、こうしたキリスト教信仰と同時に、ドワーフ(こびと)を彫った像が「ドワーフの間」をはじめあちらこちらに置かれていることだ。その昔、人々は地下にドワーフたちが住んでいると信じていた。こうした民間伝承がいまに伝えられ、守り神として祀られているようだ。