ポーランドを支えた産業遺産「ヴィエリチカ・ボフニャ王立岩塩坑」

聖キンガ礼拝堂

地下101mに広がる聖キンガ礼拝堂。壁面は多数のレリーフや彫刻で装飾されている ©牧哲雄

世界ではじめて世界遺産に登録された12の物件のひとつでもあるこの岩塩坑は、塩を採掘するために掘られた深さ約300m、総延長300kmに及ぶ坑道跡で、アリの巣のように張り巡らされた迷宮は地下博物館として公開されている。

今回はポーランド王国の財政を支え、ヨーロッパ史に大きな影響を与えたポーランドの世界遺産「ヴィエリチカ・ボフニャ王立岩塩坑」を紹介する。

1978年、世界遺産、誕生!

「カジミェシュ大王の間」の掘削機

「カジミェシュ大王の間」に備えられた掘削機。馬にロープをひかせ、回転力に変えて岩を掘り進めた ©牧哲雄

1972年に採択された世界遺産条約にしたがって、1978年、7か国12の物件が史上はじめて世界遺産に登録された。アメリカの「メサ・ヴェルデ国立公園」「イエローストーン国立公園」、カナダの「ランス・オ・メドー国定史跡」「ナハニ国立公園」、エクアドルの「ガラパゴス諸島」「キト市街」、エチオピアの「シミエン国立公園」「ラリベラの岩窟教会群」、セネガルの「ゴレ島」、ドイツの「アーヘン大聖堂」、ポーランドの「クラクフ歴史地区」、そして「ヴィエリチカ岩塩坑」だ(「「ヴィエリチカ岩塩坑」は2013年に名称が「ヴィエリチカ・ボフニャ王立岩塩坑」に変更されている)。

これら12件は都市遺跡や宗教建造物から地学的価値のある国立公園や生命史のポイントとなる大自然までバラエティに富んでおり、様々な価値観でもって遺産を保護するという決意が表れたものとなった。「ヴィエリチカ岩塩坑」は12件の中でもとても特徴的な世界遺産だ。

この世界遺産は岩塩を掘るための坑道とその関連施設からなる物件で、特に美しいわけでも偉大な建造物があるわけでもない。しかし、ここで採掘される岩塩はポーランド王国に莫大な富をもたらし、それによって世界を変えた。このように、人間の生産や仕事に関わる遺構を「産業遺産」という。この物件は、初の世界産業遺産でもあるのだ。