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どうして今、3DSは値下げしたのか(2ページ目)

本体価格を1万円値下げしたニンテンドー3DS(以下3DS)。突然の価格改定にゲーム業界は大きく揺れました。どうして今、3DSは値下げをしたのか、しなくてはならなかったのか。3DSを取り巻く環境はどうなっているのか、整理して考えてみたいと思います。

田下 広夢

執筆者:田下 広夢

ゲーム業界ニュースガイド

PSPの低年齢化

PSPの低年齢展開の図

お店でも、子供向けデザインの販促物が飾られるようになりました。PSPはかなり意識的に低年齢層を狙ってきています。

3DSの値下げを受けて、いくつかのメディアがスマートフォンやソーシャルネットワークのアプリが好調であることと結びつけて報道していましたが、それはかなり疑問です。中長期的な展望としてそれらを意識することはあるにしても、今回の値下げに関して言えば、ほぼ関係ないでしょう。何故なら、それらのプラットフォームはずっと好調で推移してるわけで、任天堂が急に慌てる理由にはならないからです。

それよりも、任天堂がここまで慌てる理由として普通に考えられるのはライバルハードの存在です。まず、DSのライバルだったPSP。これが2010年末発売のモンスターハンターポータブル 3rd(以下モンハンP3)で大躍進し、その後も堅調に推移しています。ただ堅調なだけなら良いかもしれませんが、ジワジワと遊ぶ年齢が下がってきていると言われています。そんな中、実に見事に登場したのが2011年6月16日に発売されたレベルファイブのダンボール戦機でした。発表時点では内容がPSPのユーザー層よりも下すぎると懸念もありましたが、新規タイトルながら見事30万本近くを販売し、PSPの低年齢向けの先陣を切りました。

そしてこの夏、SCEはかなり低年齢層を意識した展開をしています。「この夏、PSPが激アツだ!」というキャッチコピーと共に、これまでSCEが持っていたおしゃれな雰囲気ではなく、コロコロコミックといった児童誌にあるような、原色をバーンと扱った派手な色彩で、ダンボール戦機やパタポン3、トリコ グルメサバイバル!や太鼓の達人ぽ~たぶるDXといったタイトルをプッシュした告知展開を行っています。

これ、実は今までのSCEにはあまりなかった展開なんですね。ファミリーではなく、子供層に直接訴えかけるやり方です。DSは非常に子供に強いハードでしたが、3DSはまだそれほど手が伸びていません、ここでPSPが子供層へアプローチをかけるというのは実にうまいタイミングかもしれません。

PSPとPSVitaの挟撃

PSVitaの図

2011年冬には、いよいよPSVitaが登場します。

PSPが低年齢層に伸びしろを求める中で、こんどは20代後半以降のゲーマーをつかみにきてるのが2011年冬発売予定のPSVitaです。PSVitaの存在、PS3で遊ばれているようなゲームが携帯機でも遊べるというプレゼンテーションは、2011年1月時点でなされましたが、衝撃だったのは2011年6月に行われた世界最大のゲームイベント、エレクトロニック エンターテイメント エキスポ、通称E3で発表された価格でしょう。なんと値下げ前の3DSより僅かに安い24,980円

1月にプレゼンテーションされた性能から、コアゲーマーに向けたハイスペックのハードという印象がありましたが、この価格によって、3DSはファミリー層を取り込める買いやすいハードで、PSVitaはコアゲーマーが買う高級機、という住み分けが怪しくなりだしました。

PSPが低年齢層を獲得しだし、PSVitaはスタートはコアゲーマーを取りに行きつつも、モンハンPシリーズを武器にPSPの市場を移動させやすい価格帯で勝負をかけてきた、という状況。2011年半ばに入って、PSPとPSVitaによる3DS包囲網がどんどん強くなっている印象です。そんな中で、任天堂は最悪のシナリオを回避に動きました。
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