「つの付く年齢」は世界と相互作用しながら知識を深める時期
一つ、二つ…九つと数えられる約10歳くらいまでは、世の中に存在する様々なものに触れながら、相互作用を通して世界を認知していく年頃です。それなのに早くから小学生の勉強のように抽象化された世界に向かわせると、家の内外の具体的な世界での経験が不足してしまいます。
成長した後に使える様々な引き出しを作ることが、この年頃の子どもには最も重要な課題なのです。最も大きな学びの場が子ども同士の遊び。その遊びを自由にさせることをためらわせる事件が多く起きていることに加えて、様々な習い事によって、遊びの時間が奪われています。
現代の子どもを見ていると、かつての子どもがしたような遊びをあまりしていません。練習によって技術を積まないと遊べない遊び(けんだま、お手玉など)、人数がそろわないと遊べない遊び(トランプ、カルタなど)がそれです。こうした遊びは、粘り強さや達成感、かけひき、勝負勘などと、コミュニケーションや社会性を育てます。
つのつく年ごろは自然から多くのことを学びます
繰り返しになりますが、10歳くらいまでは遊びは無駄な時間ではなく必要な時間なのです。
低年齢の子どもにはそれなりの教え方が必要
論理的な考え方ができるようになるのは10歳以降と言われています。ですから大人の考えで子どもに勉強を教えても子どもには理解できません。できるようになった子どもは、理解はしていなくても手順を覚えていることが多いのです。具体的なものを用いて目の前でやってみせたり、身近なものに例えて子どもの理解を助けたりしながら、導いてやる必要があるのです。
一つの例を挙げましょう。
「たろうくんは8こ、はなこさんは5こ、あめをもっています。どちらがいくつおおくあめを もっているでしょうか?」
多い、少ないの概念は年長ならほとんどの子どもが分かるので、たろうくんが多いと答えられます。「いくつ多い」になると、分からない子どもが出てきます。
さらに「ちがいはいくつでしょう」になると、そのような質問をされたことがない子どもは、問いの意味が理解できません。こういう時には、実際にあめを持ってきて並べてみせます。そうすれば子どもにも答えられる問題になるのです。
ところで、アメリカの有名な教育心理学者が、子どもは質問者の意図を読み取ろうとして答えを選ぶので、本当は分かっているのに、違う答えを選んでしまうことがあると言っています。つまり子ども関心は正解かどうかではなく、大人に認めてもらうことにあるわけです。
また幼児期の知性や心の発達は階段を上るような経過をたどるので、踊り場で足踏みしているように見えても、実は次への飛躍の準備だったりします。今出来ないことが1ヵ月後にはいとも簡単に成し遂げてしまうということが起こります。
こうしたことを理解して低年齢の子どもたちの学習指導ができれば、早期教育は成功すると思います。