天下第一の名山、世界遺産「黄山」
黄山からの眺め。霞の中に浮かび上がる山々と黄山松のシルエットが美しい
今回は数少ない複合遺産のひとつでもある中国の世界遺産「黄山」を紹介する。
黄山より帰りて岳を見ることなし
雲海と黄山。雲海はすさまじいスピードでその形を変える
ところが、中国ではこんなことがいわれている。「五岳より帰りて山を見ることなし、黄山より帰りて岳を見ることなし」。意味は、「五岳を見てしまったら他の山なんて見れない。でも黄山を見てしまったらその五岳さえ見れない」。明の地理学者・徐霞客(じょかきゃく)の言葉である。
「黄山の四絶」に数えられる怪石群
このように、中国に名山は多かれど、「天下第一の名山」といったら黄山なのだ。
仙境・黄山の伝説
花崗岩の滑らかの岩肌と、岩の裂け目に根を張り、岩山にかじりつくように生えている黄山松
一方、黄山はその昔、不老不死を得た仙人たちが暮らす場所=仙境として知られており、天に暮らす仙人たちの都=天都山と呼ばれていた。
黄山松は黄山の固有種。樹齢千年を超えるものもある
やがて時代は下り、天都山は黒々といた岩肌の色からイ山(いざん。イは黒偏に多)と呼ばれるようになっていた。しかし道教に心酔していた唐の玄宗皇帝は、黄帝の伝説にちなんで黄山と改名するよう命令する。
古来仙境として親しまれた黄山は、こうして漢民族の故郷として愛されることになった。