土地活用のノウハウ/空室対策・賃貸管理・老朽化

家賃滞納の不良入居者に苦労した二人の女性オーナー

オーナーさんの賃貸住宅経営の最大の悩み事は空室問題ですが、次に多いのが賃料滞納です。入居者がいても賃料が入らないのでは空室と同じですが、もっと悪いのは滞納者の開き直りとも言える態度がみられる場合です。今回は、賃料滞納にご苦労された2人のオーナーさんの実例を取り上げました。共通の原因は、「自主管理」の限界ですが、自主管理にあたっての考え方、管理を委託する場合の注意点などを取り上げました。

谷崎 憲一

執筆者:谷崎 憲一

土地活用ガイド

入居者に脅された高齢女性オーナー

高齢者の心労

高齢者に家賃督促は厳しい!

80歳になる女性オーナーさんは、4年もの間、家賃滞納に苦しんでいました。一戸建ての住宅を月8万円で貸していたのですが、ある日を境に入居者が全く家賃を払わなくなったのです。月8万円というと、1年で100万円弱。4年間では400万円近くになります。

このオーナーさんには息子さんがおられたのですが、「仕事で忙しい息子に、迷惑をかけたくなかった」ということで、誰にも打ち明けられずに悶々と悩んでいたのです。けれども、あるとき息子さんが気づいて事情を聞いてみると、女性オーナーさんは涙ながらに話すことになったのです。

実は、家賃滞納が始まって1年目のとき、オーナーさんは街でたまたま入居者と出くわしたそうです。そこで「家賃を払ってください」とお願いしたところ、いきなり胸ぐらをつかまれて、ビルの谷間に引きずり込まれ、ひどい言葉で脅されたというのです。

お年寄りの女性オーナーさんはそれで震え上がってしまって、家賃の督促どころか、貸した家に近づくこともできなくなってしまったのです。そして長い間、この問題を一人で抱え込んでいたのでした。

私は息子さんから相談を受けて事情を知り、ひどく腹が立ちました。80歳にもなるお年寄りの女性を暴力的に脅すなど、絶対に許すことのできない行為です。

相談に来た息子さんは、「もうお金は問題ではない。とにかくこんな人と縁を切りたいので知恵を貸してください」ということでしたが、こんな輩を放置するのは、社会的にもよくないことです。

結局、それなりの費用はかかりましたが、弁護士と連携して家賃督促を進め、最終的に未払い賃料を回収し、不良入居者を退去させることもできました。訴訟に至らせず弁護士に丹念な交渉をしてもらったのです。私が督促などを代行すると、非弁行為と言って弁護士法違反になりますので、私の立場はあくまでも補助要員となります。

そして、問題解決後、オーナーさんには、アパートへの建て替えをお勧めしました。というのも、このまま一戸建てを1世帯に貸してしまうと、滞納があった場合には収入がゼロになってしまいます。その意味ではリスクが大きいのです。つまり、1戸ではゼロか100になります。

複数戸にリスク分散することにより、健全な賃貸経営に近づけることができます。オーナーさんの土地は50坪ほどの広さがあり、建て替えで8室ほどのアパートを作ることができました。

今度は自主管理ではなく、集金代行から空室保証まで全てを管理会社に任せるサブリース契約の形をとることにして、今では新しいアパートはオーナーさんの生活を支える存在となっています。
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