第3位 かくれんぼだけじゃない仕掛けを楽しむ
『きんぎょが にげた』
かくれんぼ絵本として、あまりに有名で、「紹介するまでもないだろう」とお考えの方もいらっしゃるでしょうが、五味太郎さんの仕掛けが、きんぎょを探すことだけにあるとお考えなら、この本を半分しか楽しんでいないことになるかもしれません。
もちろん、この作品は「かくれんぼ」と同じ遊びの世界を表現していますが、仕掛けはそれだけではありません。この作品には、小さな子どもたちにもわかる「物語」が隠されています。よーく注意してページを追ってみましょう。一人ぼっちのきんぎょが、金魚鉢から逃げ出すところから、お話は始まります。カーテンの陰やお菓子入れなど、様々なところに隠れては逃げるを繰り返すきんぎょ。小さなきんぎょにとっては、これは冒険にも等しいものですね。そして最後にたどり着くのは、友だちかあるいは母親か、いずれにしても居心地の良い場所のようです。
単純ではありますが、これも「行きて帰りし物語」の構成をきちんと踏んでいることにお気付きでしょうか? しかも、小さい読者が、繰り返しかくれんぼを楽しんだ後で、「あれ、このきんぎょ、どうして逃げているんだろう?」と考えたときに初めて、物語の仕掛けが動き出すという仕組み。見事ですね。
400冊以上の絵本を生み出すと同時に、ワークショップなどを通して、子どもたちの力を信じ、その力を無理なく引き出すような活動を続けていらっしゃる五味さんならではの仕掛け絵本です。
【書籍DATA】
きんぎょが にげた (五味太郎:文/絵)
価格:840円(税込)
出版社:福音館書店
推奨年齢: よんであげるなら2歳から
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