震災後、もしも、2週間以上、冴えない気分が続くようになっていたら、精神科受診を、ご考慮してみてください
2011年3月に起きた未曾有の大震災は、被災された方々のPTSD(心的外傷後ストレス障害)対策が直ちに必要になるほど衝撃の大きな震災でした。また、被災地以外の方の心にかかる負荷も、小さいものではなかったようです。
被災地周辺の親戚、知人の安否が気になるのはもちろん、生活面や仕事面での間接的な影響も少なくないはず。心配ごとで心身に負荷がかかっていても、「羽目をはずして騒ぐ気になれない」「遠出は控えたい」と、いつものストレス発散ができないままの人も少なくありません。
震災から2ヵ月以上が経過したとはいえ、心の病気には充分気をつける必要があります。心の不調は自分ひとりで背負ってしまいがちで、気付かないうちに、重症化してしまうこともあるからです。今回は、精神科(神経科)を受診した方が望ましい心の不調の目安について、詳しく解説します。
震災がきっかけで生じうる心の病気
心の病気は多くの場合、DNAレベルの生物学的要因によって定まる、病気になりやすい素地を持つ人が、ストレスをきっかけに発症します。
ただ同じストレスでも受け止め方には個人差があり、今回の震災のストレスでも、日常範囲内の心の軽い不調ですむ人から、深刻な心の病気を発症してしまう人まで、心の不調の度合いには大きな幅があることが予想されます。
震災がきっかけで発症する可能性のある心の病気は、うつ病だけとは限りません。不安障害、統合失調症、アルコール依存症、パニック障害など、心の病気全般に注意が必要になります。
心の病気は早期治療が大原則
心の病気への対処の原則は、「できるだけ早期に治療を開始する」につきます。心の病気は脳内環境に問題が生じる病気で、放っておけば悪くなっていく傾向があり、できるだけ早期に脳内環境を調節する治療薬、例えば脳内神経伝達物質セロトニンを介する神経細胞の受容体に作用する、抗うつ薬など、症状に応じて選択された治療薬を服用する必要があります。
ただ、精神科(神経科)の早期受診がしづらい要因もいくつかあるようです。まず、人によっては精神科受診自体の敷居を高く感じてしまっている場合があること。関係のないことでも、「被災で苦しんでいる方に申し訳ない」という自責の念が生じるようになっていたとしても、それがうつ病特有の自責の念という症状であることは自覚しにくく、心の不調自体を見逃してしまうことは少なくありません。
おさらいしておきたい心の病気の初期症状
一般的に心の病気の初期は、「頭がすっきりしない」「やる気が起きない」など、日常範囲内の不調と区別しにくい面があります。場合によっては、こうした症状と心の病気の区別がつかず、身近な人に誤解されてしまうこともあります。例えば夫婦間で夜の生活を拒否されると、相手の気持ちや愛情の問題と思ってしまう人が多いかもしれませんが、実はうつ病による性欲低下が原因という可能性もあるのです。それでは次に、心の病気の症状をまとめます。
心の病気を疑うべき心の不調のリスト
震災を機に、今までになかった以下のような症状が出ていないかチェックしてみましょう。- 気持ちが冴えず、今まで楽しめていた事を楽しめない
- 人生が空虚に感じられ、強い絶望感を覚える
- イライラが強く、物事に集中できない
- 不安感が強すぎる
- そこにあるはずのないものが見えたり、聞こえるはずのない声が聞こえる
- 絶えず特定のことを考えてしまい、心が苦しい
- 酒量やタバコの本数が増えた
- 睡眠の変化(寝つきが悪い、早朝覚醒、昼間の眠気が強すぎる等)
- 食欲の変化(食欲低下、甘いものの過食、衝動食い等)
- 性生活が億劫になってしまった
- 家族、友人との会話が顕著に減ってしまった
- 仕事、学校に足が向かない
- 死にたい気持ちが生じている
死にたい気持ちが生じている場合は、脳内環境に問題が起こっていて、うつ病が重症化している可能性があるため、自殺リスクへの対処が肝要。また、幻覚、妄想が起きている場合も、脳内環境に問題が生じている可能性が高く、治療薬が必要ですが、幻覚、妄想は、他人からは明らかであっても、自分では、なかなか気づきにくい問題があります。
残りの症状に関してはそれで受診すべきかどうかは、基本的には症状の強さ、持続期間によって考えましょう。大まかな目安は、症状が2週間以上継続していて、「このままだと〇〇のノルマをこなしていけない」など、家庭、職場で問題が深刻化してしまった場合。ぜひ、精神科(神経科)を受診してみてください。