労務管理/労務リスク管理

地震・災害マニュアルの作成方法

天災事変が起こった際、パニックを起こさず行動できるでしょうか。なにも対策をとっていなければ大混乱となってしまうことでしょう。被害を最小限に食い止めるために、準備はかかせません。効果的なマニュアルについて考えます。

小岩 和男

執筆者:小岩 和男

労務管理ガイド

防災意識の高い企業が生き残る

会社・職場での防災対策は、防災マニュアル作りから始まります

会社・職場での防災対策は、防災マニュアル作りから始まります

この度の東日本大地震は、未曾有の天災事変でした。被災を受けられた皆様には心からお見舞いを申し上げます。早期の復興をお祈り申し上げます。

まさに想定外の天災事変。世界の歴史上でも過去最大級と報道されました。日本が地震国であることを国民が痛感した事象でした。災害は避けることはできませんが、一方で災害から被る被害は対処の仕方で軽減することができます。

この大震災の教訓を活かし、企業が一丸となって日頃から防災対策に取り組んでいきましょう。企業における経営資源(人・物・金)を守っていかなければ経営は成り立ちません。今回は、企業で取り組むべき災害マニュアルの作成、運用方法を解説します。防災意識の高い企業が、明日の経営を守るということを肝に銘じておきたいものです。

防災マニュアル作成のポイント

愛知県防災局により、1995(平成7)年の阪神・淡路大震災の教訓を基にした防災マニュアル作成手引きが作成されています。これは、東海地震に備えるため同県が作成したものですが、企業の防災対策ポイントが簡潔明瞭に紹介されています。マニュアル作りのテキストとして活用し、自社版を完成させましょう。今般は、この内容を基に解説を進めます。

1.災害時の組織体制を決めておく
緊急事態が発生した場合の対策本部を決めます。この組織は、通常の経営組織とは異なります。○○部○○課のような公式組織ではなく、別途企業のトップ(社長、役員)が、緊急時の意思決定機関になり組織化。その配下に役割分担を決めた担当者を配置します。

従業員の安否確認担当、被災状況の確認担当、救助・救出・救急担当、行政機関、関係会社等の連絡担当、自衛消防隊などです。誰がなにをするのか明確にします。それぞれの担当は、正・副の2名体制を取っておくことで万全を期しましょう。

2.緊急連絡網をつくっておく
緊急事態が発生した場合には、情報収集とその伝達が重要。今般の大震災では、デマなど不確実な情報が氾濫して混乱が起きました。正確な情報を迅速に収集し社内に伝達していくことでパニックを防ぐのです。

社内の連絡網がない状態では、混乱が混乱を呼びます。緊急連絡網は、社内の組織図により社長をトップに、各役員、各部署の責任者(部長など)の連絡先を記載。また、各部の従業員の連絡先も各部署ごとに記載します。誰が誰に連絡をするのかフロー図を作成し、従業員に配布しておきましょう。

その際のポイントは、連絡手段を多くとること。今般の大地震では、携帯電話などがかかりにくくなってしまい安否確認がしばらくできない状況がありました。社内電話、自宅電話、携帯電話以外にパソコン用メール、携帯電話メールは通信手段として大いに活用できます。

3.情報収集と提供のしかた
1.の災害時の組織体制で役割を負った担当者は、緊急時の情報を収集し迅速に伝えなければなりません。従業員の安否、建物・設備・物品の被害状況、関係会社・取引先の被害状況等です。こうして収集した情報は、社内で一覧できるように掲示するなどして情報の共有化を図っていくと混乱が回避できます。

マニュアルには、自社内の支店、営業所、取引先、消防、警察、市区町村役場、交通機関、近隣医療機関、ガス、水道、電気等の連絡先情報を記載。混乱していると、パニックのためどこに連絡をしてよいのか分からなくなることが予想されるため、一覧表で分かるようにしておきます。また、デマやうわさに惑わされないように行動をするためにも、公の機関が発表したものを収集、提供することがポイントです。

<関連記事>
天災事変に対する労務リスクマネジメント

<関連資料>
事業所のための「防災マニュアル」作成の手引き(愛知県防災局)
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