キャスティングの意外性も魅力
---一言で説明できない映画だけに、制作サイドへのプレゼンテーションも大変だったのでは?佐藤 いろいろな所に持ち込んだんですが、なかなか実現までにはこぎ着けられませんでした。そんな中で、原作の武居俊樹さんにお会いしたことが、何としても映画化しようという気持ちを後押ししてくれました。まさに無頼中の無頼といった感じの人でした。
---堀北さん扮する武田初美とは、水と油と言っていいくらいイメージが違いますね。
佐藤 確かに(笑)。でも、武居さんの役を女の子にすることは、最初の時から決まってたんですよ。作家と編集者というのは、夫と妻の関係によく似てると思うんです。初美も最初は赤塚を毛嫌いしていたのに、徐々に魅力に惹かれて影響を受けることになります。
---赤塚役の浅野さんは、かなり意外なキャスティングのようにも思えましたが。
佐藤 こちらも、最初から熱烈にオファーしました。風貌に関係なく、とにかく赤塚不二夫を愛している人に演じてほしかった。浅野さんなら“同志”になってくれると思いました。
---これまでの浅野忠信のイメージとは180度違う“怪演”でした。
佐藤 クランクイン前は、別作品との関係もあって、長髪でひげボーボーでした。でも僕はその格好でも構わないと思っていた。ところが撮影に現れた時には、きれいにヒゲも剃って、七三の髪型に整えていたんです。クランクアップの頃には、赤塚不二夫以外の何者にも見えなくなってましたね。