フランスを守る城砦モンサンミッシェル
正門に当たる王の門周辺から見上げたモンサンミッシェル。頂上の修道院は幾重もの城壁で囲まれている
王の門周辺の様子
ケルトからの伝統がいまなお色濃く残る土地で、イギリスとフランスを結びつけるイギリス海峡の要衝であり、ノルマン人によって征服されイギリスでもフランスでもない国が誕生した場所でもあった。
10世紀、ノルマン人のロロはノルマンディーの地を拠点に西フランク王国(のちのフランス)を攻めるが、国王シャルル3世はロロと和解してその土地を与える。ノルマンディー公国だ。1066年、ノルマンディー公ギヨームはイングランドを攻め、ついにイングランド王となる(ノルマン・コンクエスト)。モンサンミッシェルはイングランド王&ノルマンディー公のもとで大いに繁栄する。
モンサンミッシェルと干潟
百年戦争でフランスの大逆転劇を演じたジャンヌ・ダルクは大天使ミカエルの声を聞いたことで有名だが、モンサンミッシェルもまたミカエルの加護で知られた土地である。こうしてミカエル信仰が復活し、より多くの巡礼者を集めるようになる。
18世紀のフランス革命後、モンサンミッシェルの修道院は一時廃止され、監獄として使われようになるが、19世紀以降修道院は再開され、いまに至っている。
モンサンミッシェルの見所
ラ・メルヴェイユ最上階の回廊。修道士はここで休息をとっていたという
島内に立ち並ぶ店々の看板
島外には海や干潟、草原が広がっており、ラムサール条約にも登録された豊かな生態系を見せている。干潟部分は満潮時は海に覆われ、干潮時はモンサンミッシェルの周りを一周できるほど潮が引く。少なくとも6時間は滞在して潮の満ち引きを観察したい。夜はライトアップされたモンサンミッシェルを海の向こうに見ることができる。これがまた美しい。
島内の中心は高さ約79mの岩山にそびえ立つキリスト教コンプレックスで、数多くの礼拝堂や修道院、納骨堂、塔が散在している。頂上にあるのが三層のゴシック建築ラ・メルヴェイユで、その隣に修道院附属教会が並んでいる。他にもサン・マルタン地下礼拝所やサン・ティエンヌ礼拝室など、見所は数多く存在する。
ラ・メルヴェイユの騎士の間。ラ・メルヴェイユは修道士の居住区で、礼拝堂や食堂など多数の部屋からなっている
島の外のホテルから海に浮かぶモンサンミッシェルを眺めるのもいいし、島内のホテルに泊まって夜のモンサンミッシェルを楽しむのも悪くない。パリから日帰りで訪れるツアー客も多いが、個人的にはモンサンミッシェルにはぜひ一泊はしてもらいたい。
なお、モンサンミッシェルは19世紀に造られた陸と島をつなぐ道路のために砂の堆積が進んでしまい、すでに2mも積もってしまったという。海の中にたたずむ昔の姿を取り戻すために、現在道路を橋化する工事が進んでおり、2012年前後に完成予定になっている。
<INDEX>