ストレス/身近な人のストレスケア

「助ける立場」の人に訪れる危機と必要なストレスケア

【公認心理師が解説】災害支援だけでなく、育児、介護、看病など、誰かを「助ける立場」の人は、自分でも気づかないうちにストレスをためる傾向があります。最低限覚えておきたい3つのストレスケアのポイントをお伝えします。

大美賀 直子

執筆者:大美賀 直子

公認心理師・産業カウンセラー /ストレス ガイド

助けることで傷つく場面もたくさんある 

ストレス

「助ける立場」の人は自分のストレスに気付きにくい


被害や困難に遭遇している人を支援する人が、覚えておきたいことがあります。それは、困っている相手だけでなく自分自身の心もいたわり、ケアをすることです。被害や困難に遭遇している人は、想像を絶するほどのストレスを抱えています。そのため、支援者に対してストレスをぶつけたり、拒絶的な態度を向けたりすることもあるかもしれません。

これらは、極度のストレス状況下における自然な心理的反応なのですが、とはいえ、支援者も「人の子」です。そうした態度を受けると、傷つき、むなしく感じてしまうこともあるでしょう。だからこそ、自分自身のストレスをケアしていくことが大切なのです。
 

災害支援者に多い3種類のストレス 

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災害支援者は強いストレス環境で活動している

日本赤十字社がまとめた災害援助者用の手引き『災害時の心のケア』によると、被災地の支援者が受けるストレスには主に3つあるとされています。

1. 危機的ストレス
現場で経験する死や事故への恐怖、死体や惨状を目の当たりにするショック、治療の優先順位の決定などの責任の重い決断、危険な環境での活動、任務の失敗、など危機的状況が招くストレス

2. 累積的ストレス
危険な環境での困難な救護活動、任務のプレッシャー、被災者からの否定的な反応、倫理的なジレンマ、などが蓄積していくストレス

3. 基礎的ストレス
過酷な環境で眠れない・休めない状態、チーム内の人間関係の問題、納得できない指揮命令、など活動に伴って生じるストレス

さらに、この手引きでは、支援者に生じやすい危機的な心理として、「私しかできない」と思いこみ、責任を任せられなくなること、 能力や適応力を使い果たした末に疲れ果てること、被災者が自立に向かうと同時に必要とされなくなるむなしさ、日常復帰後の喪失感や虚脱感、などを挙げています。

支援中はストレスが溜まっていても、過酷な状況や現場の緊張感で心身が興奮し、限界を超えても頑張ってしまうことがあります。だからこそ、ストレスをケアしながら臨んでいかないと、自分自身の健康が危うくなってしまいます。
 

「助ける立場」の人のストレスケア、3つのポイント 

ケア

 自分のケアができてこそ誰かの役に立てる


支援者が自分自身のストレスケアを考えるうえで、重要なポイントを3つ挙げたいと思います。

1. 一人で抱えず、周囲の人や制度を上手に活用する
責任感の強い人ほど、「自分が頑張るしかない」と考えるものです。しかし、睡眠や休息を後回しにして頑張りすぎてしまうと、疲労は着実に蓄積され、ついには心身の病につながってしまいます。

一人で負担を抱えないよう、長時間の支援で心身の健康を壊さないように、周りの人との仕事の分担、時間の配分を考える必要があります。周りの人、社会的制度などを上手に活用しながら、大きな枠組みで支援を考える必要があります。

2. 気持ちを打ち明ける機会を持つ
支援を続けていくと、心の傷や疲労感、燃えつき感が募りやすくなります。その気持ちを打ち明け、受け止めてもらうことで、心を楽にすることができます。

支援は「持ちつ持たれつ」の円環構造になっており、自分自身も支援を受けることで、他者を支援することができます。家族、友だちなどの身近な人に聞いてもらう、同じ立場の人とのわかちあい、指導者や専門家に聞いてもらう、といったことによって、モヤモヤした気持ちを解放することができます。

3. 休養やプライベートを大切にする
支援者は、「自分は恵まれている。だから、休んだりしてはいけない」などと思ってしまうことがあります。しかし、支援を続けるには、心身のエネルギーの充填が必要です。そのためには、睡眠、休養、気分転換の時間を持つことが必須なのです。

そして、支援とプライベートとの「オンとオフ」の切り替えを持つことも、必要です。短い時間でも、休むときには任務を忘れて気分を転換させましょう。また、支援とは直接的な関わりがない人と交流することも、よい気分転換になるでしょう。


支援は「長距離走」です。スタートダッシュで頑張りすぎてしまうと、途中で息切れしてしまいます。自分自身のストレスケアをしながら、長期的な視野を持って取り組んでいきましょう。
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