子どもたちは、なぜこれほどヒーローに惹かれるのでしょう。悪に立ち向かう強さだけがヒーローの魅力なのでしょうか?こんな疑問に答えるヒントが隠された作品をご紹介しましょう。とっても頼もしい男の子が登場する絵本 『ぼくとおおはしくん』 です。
1匹のカメをめぐる少年たちの成長を描く 『ぼくとおおはしくん』
おおはしくんは、主人公「ぼく」の友だちです。まだ知り合ったばかりですが、ぼくは、おおはしくんをちょっぴり尊敬しています。ぼくよりもたった1つ年上なだけなのに、物知りで好奇心が強く、自分の頭で考えながらいろいろな事をやってのけるからです。2人は、橋の下に作った秘密基地で「かめた」と名付けたカメを一緒に飼うようになりますが、そのかめたが逃げ出し行方不明になってしまったから、さあ大変! でも、やっと の思いでかめたを探しあてたとき、おおはしくんは思いがけないことを言って、ぼくをびっくりさせるのです……
異年齢にもかかわらず「かめた」を仲立ちにして、友情を深めていくぼくとおおはしくんの様子が丁寧に描かれます。そして、友情の深まりを通して成長する2人の姿がたくましく、爽やかな読後感を残します。
かっこいいぜ! おおはしくん
作者のくせさなえさんは、第32回講談社絵本新人賞を満場一致で受賞した実力派で、この作品がデビュー作です。その くせさんが描く「おおはしくん」は、ひと昔前のガキ大将のような存在です。けれど、どこにでもいそうな腕白な少年に見えて、実はその行動には一本筋が通っています。カメも、おおはしくんの大切な仲間です
こう見てくると、私たちが「おおはしくん」に惹かれる理由が「憧れのヒーローたち」の魅力と何やら重なってきませんか?仮面ライダーもスーパーマンも、決して強いだけが取柄の存在ではありません。彼らもまた、仲間を大切にし、行動力があって、心優しい者たちです。男の子たちは、そんな人間的な魅力にあふれたヒーローたちに自分自身を重ねて、憧れを抱くのではないでしょうか。
それなら、おおはしくんも りっぱなヒーローの1人です。ラスト近くおおはしくんがぼくにむかって涙を浮かべながら発するセリフに、彼のヒーローとしての魅力が集約されています。
それにしても、おおはしくん、最初から最後まで、本当にかっこよすぎだぜ!
【書籍DATA】
くせさなえ
価格:1470円
発売日:2011/4/15
出版社:講談社
推奨年齢:5歳くらいから
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