不安

大きな自然災害がおきた後の心のケア。ストレスの影響は被災地以外にも及びます

自然災害はなぜいつも思いがけない時に思いがけないところで起きてしまうのでしょうか。4月14日に発生した熊本大地震も、その被害の大きさの映像には声をなくしてしまいます。

被災地から離れた地域の方ならば、被災地を応援するためにできることを考えることが第一になるでしょうが、こうしたショック体験時に気をつけたいものとして、心の病気があります。

2011年の東日本大震災では、発生後2週間ほど過ぎた頃から、被災地から遠く離れた地域でも心の不調を訴える方が増えたことが報道されました。直接被災したわけではなくても、震災は多くの人の心の健康に打撃を与えてしまいます。

報道をはじめ、平時にはない衝撃が心にかかることで起こる「急性ストレス障害(ASD)」の症状について理解した上で、深刻なうつ病などを発症しないために大切なことを知っておく必要があるでしょう。

被災地以外でも起こる「急性ストレス障害(ASD)」の症状

2011年の東日本大震災では、発生後、被災地の甚大な被害の様子や、現実のものとは思えないほどの大津波の映像が繰り返し報道されました。発生から1ヶ月以上経過したときでも、ガイドである私自身、まだ現実に起きたことを認められないような気持ちが続いていました。被災地の方はもちろんのこと、被災地から離れて暮らす人々にとっても、自然や社会への認識、価値観が揺らぎ、平穏な状態が乱される時期だったと言えるでしょう。

急性ストレス障害(ASD)は、簡単に言えば、PTSDになる一歩手前の状態です。特徴的な症状として、以下のようなものが挙げられます。
  • トラウマになった出来事が繰り返し、脳裏に現われる(フラッシュバック)
  • 悪夢を見る
  • 現実感が低下している
  • トラウマを想起させる出来事、刺激を避けようとする
  • 心身が緊張状態にあり、動悸などを自覚する
  • 不眠・不安症状がある
生々しい映像を繰り返し思い出してしまったり、不眠や動悸などの不安障害がある場合は、なるべくそれらの映像や情報から一時的に距離をおくようにするなどの対策が必要になってきます。また、ASDと診断されるのは、トラウマとなる出来事の後、上記のような症状が日常生活に深刻な障害を及ぼしたものの、4週間以内に収まった場合です。もしも症状が、4週間以上続く場合は、しっかりとPTSDの治療を検討する必要が出てくるでしょう。

震災後に気持ちが塞ぎこむなどのうつ症状が出ている方へのアドバイスとして、次の3つのうつ病対策法があります。

対策1:うつ病症状を知り、早期発見に努める

うつ病対策の大きなポイントの一つは、自分自身の状態にできるだけ早期の段階で気づくこと。うつ病の症状を知っておき、うつ病へのアンテナを高くすることが大切です。うつ病は、決して心の弱い人の病気ではありません。心的ストレスなどをきっかけに、脳内の神経科学的環境が変化することで起こるため、誰でも罹る可能性があります。以下にうつ病の症状をまとめます。
  • 食欲の変化
  • 睡眠の変化
  • 今まで楽しめていた事が楽しめない 
  • 自責の念が強くなる
  • イライラ感が強く、集中力が低下する
  • 疲労を覚えやすい
  • 死にたい気持ちが生じる
こうした、うつ病の症状を心得ていても、実際にはうつ病に気づきにくいことがあります。「自分は、うつ病にかかるわけがない!」という思い込みが強い場合も、自分がうつ病だとはなかなか思えなくなります。

また、うつ病の症状自体には、決まったパターンがあるわけではありません。場合によっては、気分の落ち込みが、頭痛、腹痛など身体症状の影に隠れてしまっている場合もあります。また、うつ病では、不眠、食欲不振になる限らず、反対に、過眠、食欲昂進になる場合もあります。もしも、心身の不調が2週間以上続いていたら、念のためにうつ病も疑うことが大切です。

対策2:心的ストレスを遠ざける気晴らしをする

うつ病対策の次の重要な柱は、うつ病発症、きっかけになりやすい心的ストレスを軽減させることです。震災によって被災地の方々は無論のこと、それ以外の地域の方々にも平時にはない心身への緊張がかかっています。

大きな自然災害後はさまざまなレジャーへの自粛ムードが広がりやすいようですが、「ジムで汗を流す」「気心の知れた仲間同士でのお茶会」など、自分がそれまで日常的に楽しんできたことは、ぜひ続けていただきたいものです。特にお茶会のように心の中のモヤモヤ感や悩みをこぼせる機会は、なるべく減らさない方がよいでしょう。

悩みごとや不安感を心の中に溜め込んでしまうと、炭酸ジュースの缶を持ち歩き続けたときのように、次第に中で圧力が増してしまいます。ふたを開けた途端に炭酸の中身が噴き出してしまうように、心の中にストレスを抑え込むことで、悩みの圧力は増してしまいます。意識的に心のふたを開け、圧力を逃すように自分でケアすることも大切です。

対策3:最悪の事態は絶対に回避する

うつ病対策で忘れてはならないことは、うつ病を発症すると誰にでも自殺のリスクが出てくることです。うつ病の治療開始が遅れると、死にたい気持ちが生じてきます。うつ病は思考力をスローダウンさせるので、自分の抱えている問題を、いろいろな角度から吟味することが難しくなり、一つの方向から、悲観的な思考を繰り返してしまいます。心の苦しみから逃れる手段として、自ら命を絶つことだけを解決法だと考えてしまうのです。

もしも、「死にたい」と口にするようになっていたら、うつ病はすでに重症化していると見るべきです。すぐに治療を開始する必要があるでしょう。この項目は本人の対策と言うよりも、周りの人がすべき対策かもしれませんが、もしも身近な人が「死にたい」と口にした場合、絶対に軽視してはいけません。すぐに、病院受診を薦めたり、できればぜひ病院まで一緒に付き添ってあげてください。うつ病は一旦こじらしてしまうと自殺のリスクが生じ、命を落としうる病気になります。しかし早期に治療を開始すれば、比較的容易に元の元気を取り戻せるのです。

東日本大震災の時もそうでしたが、大きな災害から復興していくためには、長期に渡って頑張れるだけの心の態勢づくりが肝要だと思います。被災地か、被災地でないかに関わらず、頑張りの合間には上手に息を抜いて、うつ病を始めとする心の病気を寄せ付けないように心がけていきましょう。ただし、飲酒やギャンブルで冴えない気分をリフレッシュしようとするのはオススメできません。依存のリスクが高まり、逆に心の病気を近づけてしまいますので、注意が必要です。

日々復興に向けて頑張っていらっしゃる方々も、無理をせず、自分の心の状態を意識してケアしていただくようにお願い申し上げます。
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