情報収集や現地見学などを繰り返して、購入する物件を決めるまでの期間は人によって千差万別です。数日で決めてしまう人もいれば、1年以上探しながらなかなか決めることができない人もいるでしょう。
ところが、いざ購入する物件を決めて申し込みをすれば、売買契約の締結から引き渡し、入居まで、あっという間に進んでいくことも少なくありません。
多くの人は初めての経験ですから、何が何だかよく分からないまま、不動産業者からの指示に振り回されているうちにすべてが終わってしまったという感想を抱くこともありそうです。
そこで今回は、購入する新築一戸建て住宅を決めてから売買契約を締結するまでの流れや段取りについて、それぞれの注意点を順にみていくことにしましょう。
まずは購入の申し込みから
建売住宅の現場では工事の進捗状況が棟によって異なることもある
住宅ローン利用の有無のほか、購入にあたって買主側からの交渉条件などがある場合にも、通常はこの書面にその内容を記載することになります。
「購入申込書」などの書面はあくまでも売主業者に対して購入意志を示すためのものであり、物件によっては他の購入希望者に対して優先順位を確保するためのものです。
これによって売買契約の締結が拘束されることはなく、後から撤回をすることも可能ですが、この書面を出すことにより、あなたの知らないところで何人もの関係者が契約に向けて動き出すことになりますから、あまり安易に考えるべきではありません。
「購入申込書」などの書面への署名押印と同時に、数万円から10万円程度の「申込証拠金」の支払いや、前2年分の収入証明書、身分証明書などの提示を求められることもあります。
これらは新築分譲マンションの場合に比較的多くみられるものの、新築一戸建て住宅の場合にはケースバイケースです。分譲区画全体の規模や、売主業者あるいは媒介業者によって対応は異なりますが、どちらかといえば「申込証拠金」は不要なケースのほうが多いでしょう。
「申込証拠金」の支払いを求められた場合でも、これは購入意志が間違いないことを確認するために授受されるものであり、売買契約締結のときに支払う手付金とは性質が違います。
売買契約を締結すれば通常はそのまま手付金に充当されますが、売買契約に至らなければ「申込証拠金」は必ず全額が返金されるべきものです。
ただし、この返金をめぐってトラブルが生じる事例もありますから、「申込証拠金」の受取書などに「売買契約をしないときには全額を(無利息で)返金する」といった旨の記載がされているかどうか、しっかりと確認をしてください。
資金計画や諸経費の再確認をする
購入の申し込みをする前の段階で、不動産業者の担当者に試算をしてもらうなど、資金計画の確認はある程度できているでしょう。しかし、申し込みをした後はまわりがどんどんと動いていってしまいますから、資金計画などに問題がないのか、再度念入りに確認をすることが大切です。とくに住宅ローンの申し込み条件の確認と、媒介手数料の金額の確認はしっかりとやっておくべきです。
一般的に住宅ローンの審査は、借り手にとって有利な条件のものほど厳しく、不利な条件(金利が高いなど)のものほど緩やかです。
そのため、金融機関Aで断られたら金融機関Bに、さらにBで断られたら金融機関Cに、などといったことを繰り返せば、いつかは貸してくれる金融機関が見つかるとしても、その融資条件は当初の予定からかけ離れたものになりかねません。
「住宅ローンを借りられさえすれば、どんな条件でも構わない」などということはないでしょうから、どのような条件なら契約を続行して、それがダメなら潔く契約をやめる(売買契約書に記載された「融資利用の特約」によって白紙解除をする)といった線引きを、あらかじめしっかりと決めておくことが大切です。
また、媒介手数料は購入の際の諸経費のなかでも大きな割合を占めるものです。新築マンションでは媒介手数料不要のケースが大半ですが、新築一戸建て住宅の場合には媒介業者を通して契約をすることも多く、媒介業者に対しては原則として媒介手数料を支払うことになります。
この支払いが必要なのかどうか、さらにその金額や支払いの時期についても、事前にしっかりと確認しておきましょう。
住宅ローンの事前審査を受ける
事前審査は省略されるケースも少なくありませんが、購入の申し込みから売買契約締結まで1~2週間程度の期間をおき、その間に住宅ローンの事前審査(仮審査)を受ける場合があります。その際に金融機関へ提出する書類などについては、不動産業者の担当者からの指示を受けながら用意してください。
事前審査で否認された場合には何らかの原因があるはずですから、それを解消するか、資金計画を見直すか、あるいは購入そのものを取りやめるか、早急に判断をしなければなりません。
自分でも気付いていなかったり忘れていたりするようなことが原因で、住宅ローンが否認される場合もあるため、不動産業者と一緒によく分析をしてみるべきです。
その原因については原則として金融機関から教えてくれることはないでしょうが、担当者によっては「ここをこうすれば良い」といった示唆を与えてくれるケースもあります。
また、事前審査によって住宅ローンの内定を得た場合でも、それは確定ではありません。売買契約を締結して住宅ローンを正式に申し込んだ後で否認されることもありますから、売買契約書には「融資利用の特約」を必ず盛り込んでもらうようにしましょう。
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