糖尿病/糖尿病の食事療法の基礎知識

地震などの災害・緊急時に気をつけるべき糖尿病食

災害・緊急時は十分な食事を食べるだけでも大変ですが、糖尿病を持つ人は平常通りの栄養管理が難しくなります。いつも通りの管理という訳にはいきませんが、深刻な状態に陥らないようにある程度の対応策は必要です。糖尿病用の非常食について説明します。

一政 晶子

執筆者:一政 晶子

管理栄養士・米国登録栄養士(RD) / 栄養管理・療養食ガイド

災害・緊急時でも、できるだけ通常に近い食事を摂るのが理想的ですがなかなか難しいものです。症状の深刻な悪化を予防する食べ方が重要になります。2型糖尿病でも、中年~高齢者では糖尿病性昏睡に陥る可能性が高めになるので注意しましょう。

非常時に注意すべき糖尿病の症状

血糖値

血糖値の管理は大切。でも緊急時はなかなか難しい…

緊急時には低血糖を防ぐこと、また極度の高血糖を予防することが大切です。これらの症状は、糖尿病性昏睡など深刻な事態を引き起こす可能性があります。まずは低血糖や高血糖値の症状も把握しておくことが大切。友人や家族にも症状と対処法を伝えておきましょう。自覚症状が出ないこともあります。

■ 低血糖の症状
ふらつき、冷や汗、だるさ・脱力感、動機、怒りやすい、頭の混乱、目のかすみ、頭痛など

■ 高血糖の症状
食事をしても空腹感、喉の渇き、尿の回数が増える、疲労感、眠気、目のかすみ、皮膚のかゆみ、傷が治りにくい、風邪引きやすいなど

非常時・緊急時の糖尿病食のポイント

1型糖尿病の場合、食事による対策は現実的ではなくインスリンが必要です。2型糖尿病の場合は、ある程度は食事での血糖値管理が可能です。ここでは2型糖尿病についてお話します。服薬・インスリンが十分確保出来ない時の緊急時の食事案などを示していますが、個人の症状は異なりますので必ず前もって医師等に相談して下さい。

■食事(特に炭水化物)は大量にいっぺんに食べず分割してみる
例えば大きなおにぎりと甘い飲み物がペットボトルで支給された場合、それらを一気に摂取すると高血糖値になりやすくなります。避難所での生活であっても、こういった食生活を繰り返す場合は特に注意が必要。日頃から自分の糖代謝力(炭水化物の摂取量と血糖値の上下の関係)を確認している人は、代謝力を意識して分割して食べるとよいでしょう。

糖の代謝力が分からない人は、一度に食べる量を支給された分の半分くらいに抑え、3~5時間後に残りの半分を食べるなど工夫してみましょう。取り分けておく場合は衛生状態に十分注意して下さい。飲料も同じです。ペットボトルの清涼飲料水は一気に飲み干すのではなく分割して飲むよう工夫しましょう。

■可能ならたんぱく質・食物繊維の多い食品を加える

ナッツ

ナッツ類もタンパク源

難しいかもしれませんが、たんぱく質の多い食品(肉、魚、卵、チーズ、牛乳、豆)、食物繊維の多い食品(野菜・豆など)などを毎回の食事に加えられるとベストです。たんぱく質や食物繊維を加えると、満腹・満足感が増え、一度に食べる炭水化物を抑えやすくなります。緊急時は炭水化物の摂取が多くなりやすいと思いますが、色々な食品(たんぱく質の多いもの、食物繊維が多いものなど)を組み合わせることで血糖値の管理がしやすくなります。

■塩分の高いものは控える
血圧が高めだったり、腎臓が十分に機能していない人もいるかもしれません。基本的に塩分の高いものは控えるようにしましょう。お弁当などが支給された場合は、漬物や佃煮などは残したほうがよいでしょう。

■インスリン・服薬の特徴を理解しておく
日頃からインスリンや服薬の特性をしっかり理解しておくことが大切。非常時は食事の量・頻度・時間などが通常時とは同じとは限りません。食事は通常通りではないのに、日頃と同じように薬を使うと、低血糖に陥る場合もあれば、高血糖になる危険も出てくると思います。例えばインスリン・服薬(一部の種類)を通常通りに使い、食事ができなかったり、食事の時間がずれたりすると低血糖になる可能性があります。

薬が十分で無い時にどうするのか、食事が1日に一度しかできない場合は薬のタイミングと量はどうするべきなのか、医師に相談して緊急時の計画を立てておきましょう。

■非常用の糖尿病食を準備しておく
糖尿病向けの非常食の準備は一般的な対応策と同じよいでしょう。詳しくはこちら>災害・緊急対策に…栄養学的にお奨めしたい非常食一覧

可能ならば、緊急時の血糖値管理対策として、炭水化物(米、パン、麺)とたんぱく質(肉、魚、豆、乳製品など)を同時に食べるようにしましょう。服薬・インスリンが十分でない場合は炭水化物の摂取を通常時より抑えることも検討してみましょう。上記で述べたように一気に食べるのではなく分割するのもよいでしょう。

高血圧・腎臓病がある場合は、缶詰・レトルト食品等も低塩の物を選びましょう。普段はインスリン・服薬を調整するのではなく、とにかく食事制限をするようにばかり言われているかもしれませんが、その逆も可能です。食事を薬に合わせるのではなく、食事にインスリン・服薬を合わせる方法を知っておくことも大切です。非常袋には低血糖対策アイテムであるブドウ糖などをを入れておきましょう。インスリンが必要な人は日頃からきちんと緊急時対策をしておきましょう。

関連記事:大地震,台風,洪水,テロ..災害と糖尿病(1)

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※当サイトにおける医師・医療従事者等による情報の提供は、診断・治療行為ではありません。診断・治療を必要とする方は、適切な医療機関での受診をおすすめいたします。記事内容は執筆者個人の見解によるものであり、全ての方への有効性を保証するものではありません。当サイトで提供する情報に基づいて被ったいかなる損害についても、当社、各ガイド、その他当社と契約した情報提供者は一切の責任を負いかねます。
免責事項

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます