電磁波過敏症の症状・診断法
音だけでなくて電磁波も漏れています
電磁波過敏症に人に対しては、電磁波の影響を見る実験として、プラセボ効果の逆の「ノセボ効果」(偽薬で不都合な作用出る)が認められています。つまり、電磁波の有無を被験者に知らせない状態で、電磁波のない状態にした場合にも症状の訴えがあることが報告されています。このため、これらの訴えは電磁波を意識するものから起きているのかもしれないが、実際は電磁波による症状ではないのではないかという見解が強いです。
なぜ電磁波は悪者にされるのか? 疫学の難しさ
他のさまざまな危険因子に比べても、電磁波は気にしなくてよいという公式見解があるのに、なぜ電磁波は一部で声高に危険性が騒がれるのでしょうか? それには疫学、実験と証明の難しさが関係していると思われます。電磁波と疾患に関する話は、疫学調査の考え方や専門用語に関する知識が要求されるため、非常に解釈が難しい分野なのです。例えば、罹患率が低く、患者数が少ない疾患を対象に疫学調査を行うと、統計学に有意差が出やすいことはご理解いただけるでしょう。もともとの数が少ないので、実験対象の中の数人の差が統計結果を左右してしまいます。
電流、磁気と疾患に関する疫学で取り上げられるのは、症例が少ない疾患に限定されています。そのため同じ疾患を対象にした調査でも、すぐに異なった結果が出てしまうのです。
電磁波の人体への影響を正確に調べるためには、電磁波の非暴露群と暴露群を比較しないといけません。しかし、携帯電話を始めとする機器がこれだけ普及している現在、非暴露群の実験対象はほとんどない状態でしょう。いわば、同じ国・地域では、ほぼ全員が等しく電磁波に暴露されている状態だと考えられるため、電磁波の健康との関係を知るのは難しいです。
全員が暴露されていた場合、食べ物(または薬物)の場合は、休薬(wash out)期間といって、摂取していない期間をもうけてから治験を開始します。現実には電磁波では休薬期間に相当する非暴露期間を設定するとは不可能です。
放射線の場合は、個人の被曝量を測定するための道具があります。医療関係や電子力発電所では、写真フィルムが入ったバッジが使用されています。電磁波の場合、個人の被曝量を測定する簡易な器具はありません。現在のように無数の発信源がある状態では、被曝量を推定して計算する方法もありません。
「電波が健康に対して影響がない」という証明をすることも、「影響がある」という証明をすることも困難な状況なのです。国際癌研究機関(IARC)の考えに従うならば、発がん性については、明らかな危険性も確認できていない電磁波について神経質になりすぎるよりも、タバコなどの明らかに害があると分かっているものに対して注意を払って生活すべきでしょう。
最後に、それでも電磁波が気になる人のために、電磁波の影響を受けずに生活する方法について、解説します。