土地活用のノウハウ/土地活用の基本とテクニック

土地活用の意外な落とし穴、「スケジュール管理」(1)(2ページ目)

賃貸住宅経営を計画する場合、「春の入居者募集シーズンに間に合うように」と強く勧められることがあります。オーナーのことを考えて提案してくれる営業マンもいますが、契約を急がされることも多いものです。事業を決断するまでの考慮期間、工事契約から完成までの期間、完成してから経営が終わるまでの期間の3つについて、それぞれのスケジュールをコントロールできなければ賃貸住宅経営を成功させることはできません。

谷崎 憲一

執筆者:谷崎 憲一

土地活用ガイド

マーケティング調査を元にプランニング

相談された各社は、さっそく土地の立地条件について調査を開始します。その土地の周辺地域の特性、生活利便施設、人口動態、競合物件の状況、家賃相場、入居者のニーズ、入居者のターゲット、地域の将来性など、さまざまな角度からマーケティング調査を行うわけです。

あわせて、法令上の制限が確認されます。土地には、どんな建物を建ててもよいわけではなく、土地ごとに建ててよい建物の規模や形状などが制限されています。これによって建物の規模(ボリューム)の上限などが確定します。

マーケティング調査が済み、法令上の制限が確認されると、各社はそれらの結果とオーナーの希望条件を踏まえてプランニングを開始します。ニーズに合った最適と思われる建物の全体プラン、見積もり、収支計画の概算などを作成します。どんな入居者を想定するか、どんな間取りで何室か。どんな設備か。建築コストはいくらくらいか、家賃収入はいくらくらいか。

さて、概ね1~2カ月ほどで、数社からの提案がすべて出揃うでしょう。提案内容はさまざまです。

●太陽光発電を搭載した共働き夫婦向けの1LDKのアパート
●高齢者も住めるバリアフリーで広めの1DKのアパート
●ペット共生型の単身者向け1Kアパート
●外観やエクステリアが美しく設備も充実した1LDKの高級アパート
●女性専用としてセキュリティを高めたお洒落な1Kアパート
 ……などなど。

各社の提案を受けて大枠を判断します 

第1次判断

各社の提案から第1次判断へ

オーナーはプレゼンテーションを受け、疑問や不明点があれば質問し、理解を深めます。分からないことは、どんどん聞きましょう。一回のプレゼンテーションにかける時間は、3時間ぐらいは必要です。

オーナーは各社からの提案を聞くことによって、この土地で賃貸住宅経営をやっていけそうか、やるとしたらどんな形態が良さそうかを、大枠をほぼ判断することができるはずです。

さて、オーナーはこのように判断しました。「賃貸住宅経営を将来に渡ってやっていけそうだ。プランはだいたいこんな感じ。融資は受けられそう。収支計画も概算がイメージできた。今後は会社を絞り込んで、さらに詳細を詰めていって、最終案を決定しよう……」

これを「第1次判断」と呼びましょう。

すべてのプレゼンを受けてから、第1次判断まで、およそ2カ月ぐらいはかけましょう。

もちろん、「この土地は、建物に投資すべきではありません。駐車場経営を考えては……」といった提案がされ、賃貸住宅の建築を一旦保留にすることも、場合によってはあるかもしれませんが、ここでは建てる方向でお話を進めます。

発注する会社を絞り込みます

オーナーはその後じっくりと比較し、家族の理解や意見を聞く時間も設けながら、提案先の過去の建築実例なども踏まえて、コンセプトがしっかりしている魅力的なプランで、かつ収支計画が堅実と思われた2社に、絞り込むのが良いでしょう。

その2社に対して、さまざまな質疑応答をし、さらに詳しい説明を求め、最終的に1社を選びます。

これが「第2次判断」です。

プレゼンをしっかり比較検討してからの第2次判断まで、1カ月~2カ月はかけてください。恐らく、その間に複数の会社から、如何ですか?という打診もあることでしょう。しつこいようですと、丁寧ながらも、毅然とお断りすることになります。

最終的に決めた1社と、基本契約(設計契約やコンサルティング委託契約など)、あるいは基本協定という合意書を締結します。形式は各社様々です。

注意!融資にかかわる落とし穴 

最終候補の1社に絞り込んだオーナー。ここで大事な注意を忘れてはいけません。オーナーはこれから、設計図面、事業計画書、登記簿など、求められる必要な書類を揃えて、金融機関へ出向かなければなりません。即ち、融資の申し込みです。

オーナーには充分に事業計画の見通しが立っていて、自信があったとしても、金融機関が、「融資はできません」となれば、計画は頓挫してしまいます。

そのため、オーナーは、最終候補会社と交わす基本契約の中に、しっかりと「停止条件」が盛り込まれているかチェックが必要です。「もしも融資が実現しない場合、スムーズに金銭的な負担もなく撤収することができる」ことになっているかどうかです。

最終候補の会社にはこの条件を了承してもらい、そのうえで設計に取りかかってもらいます。ここで注意です。この場面に、大きな落とし穴が待っている場合があります。是非、気をつけてください。

不幸にして「融資が実現しない」となった際、それでも利益を上げようと、解約手数料や違約金などをあらかじめ契約に盛り込んでおき、オーナーに対して請求する会社も中にはあるのです。同様に、着手金名目で受け取っておいたお金を返さないというケースもあります。

賃貸住宅の建築を強く勧める営業マンが高額のコミッションで動いているような気配を感じた場合は、特に気をつけるべきでしょう。契約前に、契約書の内容をしっかりと読み込んで、危険の種を見つけておくことが肝心です。

選に漏れた場合に違約金を申し立てるような会社ではなく、オーナーが困ったとき、立ち止まったとき、温かくサポートしてくれるような相手をなるべく早く見極めることが大切です。

なお、すでに述べた「停止条件」のほか、基本契約は原則無料としている会社、基本契約についてのみ別個に少額の契約を結ぶ会社など、融資のリスクに対しては、ほかにも様々な対応が見られます。ただし、タダより高いモノは無いという例えもありますので、大事業をこれから行うのですから、10~30万円ぐらいの基本設計の費用は惜しまない方がよいでしょう。

金融機関による融資判断については、申し込みから審査の完了、実際の融資の実行まで、通常1カ月程度を見ておくといいでしょう。
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