電子書籍よりDTMが大きな盛り上がり
2010年を振り返ると、やはり大きなトピックスとして挙げられるのが、iPadの登場でしょう。Macファンの人も、アンチAppleの人も、そしてまったくPCにすら興味のなかった人も、注目をし、テレビや新聞などでも大きく取り上げられました。当初4月発売の予定が5月になったことも注目を集めた大きな要因だったかもしれません。そのiPad、一般的には「電子書籍の黒船到来」といった形で取り上げられていましたが、現実的にはまだ電子書籍は実験的なものにしか見えません。その後、各社からも電子書籍ビューワーが発表されましたが、それらも同様です。
でも、ある意味PC的な汎用性を持ったiPadは電子書籍に限らず、さまざまなアプリが登場しました。その中でも大きな盛り上がりを見せているのがDTMの世界です。アメリカでのiPadの発売前日にiTunes Store内のApp Storeで発売されたKORGのiELECTRIBEはすべてのカテゴリのアプリの中でトップ売り上げを記録し、その後KORGが第2弾で11月にリリースしたiMS-20も即日App Store総合1位を記録するなど、電子書籍の比でないほどのDTMブームとなっているのです。
非力なマシンだからこそ、分かりやすかった
でも、「なんでiPadでDTMが!?」と不思議に思われる方も多いでしょう。実はここには大きな理由があるのです。ひとつはユーザーインターフェイスの分かりやすさがあります。PCを触ったことのない小さい子供やお年寄りでも直感的に扱える、操作性が新たなユーザー層にもiPadのDTMが広まっている大きな要因です。
しかし、それより大きいのは、iPadがPCに比べて非力である、ということにあるのではないでしょうか?PCのDTMは、DAWに象徴されるように高機能、高性能になりすぎて、初心者はもちろん、プロや上級ユーザーにとってさえ、難解なものに進化してしまっています。
それに対して、iPadのアプリは非力ゆえに、単機能のアプリとなっていて、分かりやすいのです。つまり、シンセは本当に楽器として、レコーダーは単に録音するもの、エフェクトは単純なエフェクターとして使うものなので、複雑なことはできないけれど、何をするアプリでどう使えばいいかが分かるのが、ウケている最大の要因なんだと思います。