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「アルコールがゼロのビールって、結局は麦味のジュースのことなの?」――
ノンアルコールビールの感想を求められ、こう答えていた女性がいましたが、確かにうなずける話です。そこまでしないと売り上げを伸ばせないほど、ビール業界は過酷な競争を強いられているのです。
翻って、住宅業界はどうでしょう。すでに賃貸市場では「敷金・礼金ゼロ」「家賃1カ月ゼロ」は珍しくなくなりました。理由はまったく同じです。完全な「借り手市場」が構築されているため、オーナーサイド(貸し手側)はあの手この手のインセンティブを総動員しないと入居者を集められなくなっています。つまり、需給バランスの調整弁として、ここでも「○○ゼロ」が一役買っていることになります。
テナントの安定入居が最大のカギ 賃料収入への課税負担も心配
そうした中、ついにマンション管理市場にも「○○ゼロ」の波が押し寄せて来ました。横浜市関内で建設中の分譲マンション(総戸数82戸)で、「管理費ゼロ」という物件がお目見えしました。報道によると、「マンションの1階部分に設ける店舗部分(床面積149平方メートル)を区分所有者に共有持分として所有してもらい、この部分から上がる賃料収入を管理組合がマンション全体の管理費に充当する」(asahi.com 11月8日)というのです。「すでに大手コンビニエンスストアの入居が決まっており、20年の賃貸借契約のうち、当初5年間については月額110万円の賃料保証を付けた。100万円を管理費として計上することで、単純計算、1世帯当たり月額1万2200円弱の管理費をまかなえる」(同)といいます。
今までありそうでなかったという点では画期的な方法だと、私ガイドは思います。今般、環境負荷の低減の一環として、屋上にソーラーパネル(太陽光発電)を設置するマンションが増えつつありますが、この電力を共用部分に活用して管理費を下げるのと発想は何ら相違ありません。資産(設備)の有効活用という意味で、評価に値する施策です。
課題としては、テナントが賃料の減額要求をしてきたり、あるいは、契約解除した場合にマンション居住者が“自腹”で管理費を負担する覚悟があるか、この点が気がかりです。また、賃料収入に対して課税されるかどうかも心配です。使い道は管理費であっても“不動産収入”には変わりありません。1階店舗部分の契約当事者である区分所有者1人ひとりが共有持分に応じた納税主体となります。
はたして、「ゼロ旋風」はマンション管理市場にも浸透するのか?―― 今後の動向から目が離せません。