ネルソンのブドウ畑を拓いたワイナリー
オーストリア出身のヘルマン・サイフリードがサイフリード・エステートを創立するために銀行に融資を頼みに行った時には、ネルソン地方はブドウ栽培には寒すぎるといって誰も相手にしなかったという。1973年当時、マールボロ地方の隣のネルソン地方には、タバコやホップの畑が点在するのみで、ブドウ畑はなかったのである。そして現在、ヘルマンの妻が経理を、息子と長女が醸造を、次女がマーケティングを担当するサイフリードは、200ヘクタール以上の畑から年産40万ケースのワインを造る大規模生産者となった。ネルソン地方、そしてサイフリード家の、サクセスストーリーである。先のミルトンはバイオダイナミクス農法だが、サイフリードはサステイナブル(持続可能な)、つまり環境にやさしく、永続性のあるやり方で運営されている。たとえば、畑には牛や羊が放牧されており、草を食べて除草する。このことによって、トラクターを入れてエネルギーを使い二酸化炭素を放出したり、除草剤を散布する必要を省いている。サイフリードは「サステイナブル・ワイングロワーズ・ニュージーランド」のメンバーとして、定期的に実施される基準検査をクリアしている。
ゲヴュルツトラミナー 2008年 (サイフリード)
ブドウは2つの地域からブレンドする。ひとつはレッドウッド・ヴァレー。これはネルソンの西側に位置する地域。日当たりの良い北向きの緩やかな斜面で、粘土質土壌である。もうひとつはブライトウォーターという地域で、ネルソン湾から南の内陸部に入ったところにある。小石が多く養分が少ない土壌は、ブドウの収穫量を抑えて凝縮度を高める。
収穫したブドウの粒を軽くつぶして、そのまましばらく果汁にブドウを浸しておく(スキンコンタクト)ことで風味を引き出し、圧搾した果汁を野生酵母で発酵させ、15~18℃の低温で発酵させることでフレッシュかつフルーティーになる。レッドウッド・ヴァレーとブライトウォーターのブドウは別々に醸造した後で、ブレンドして仕上げる。リットルあたり10gというわずかな糖分が、さらにフルーティーさを際立たせる。このワインはほんのりとした甘さで、デザート代わりに食後のゆったりした時間を過ごせる。あるいはライチなど果物とともに味わいたい。
最後に飲み方の注意を。