先住民文化が色濃く残る南部
グアテマラとの国境にあるメキシコ南部のチアパス州は、その大部分が熱帯のジャングルに覆われています。マヤ系の先住民文化が色濃いこの州でおすすめなのが、古都サンクリストバル・デ・ラスカサス。町の中心にある教会や、コロニアルな建物と土着的な先住民文化が混じったエキゾチックな雰囲気に魅せられてしまうはず。サンクリストバル・デ・ラスカサス周辺の先住民の村は、刺繍や織物などのテキスタイルの産地として有名。生産者たちが製品をサン・クリストバル・デ・ラス・カサスの中心まで持ち寄って販売しています。幾何学的な模様や、花のモチーフを織り込んだ鮮やかで手の込んだ独特なテキスタイルの数々に出会えますよ。
実は、サンクリストバル・デ・ラスカサスはEZLN(サパティスタ民族解放軍)の拠点としても知られています。メキシコ社会で長い間差別され続けている先住民族の権利のために1980年代初頭に発足したEZLNは、反グローバリズムや女性の人権尊重などを、武器ではなくインターネットを使い世界に呼びかけ国際的にも熱烈な支持を集めています。
少々怖いイメージを抱かれるかもしれませんが、一般の旅行者がその闘争に巻き込まれることはまずありません。むしろかつてメキシコ最貧州だったチアパスが、より先住民文化をアピールするようになり、今では世界中から多くの観光客が訪れるようになったのも、EZLNの功績と言えるでしょう。そのせいか町にはEZLNをモチーフにしたTシャツ、人形などのお土産グッズがたくさんあふれています。
サン・ファン・チャムラなど近郊の先住民の村では、民芸品作りや農業を営みながら昔ながらの暮らしをする人々も多く、サンクリストバル・デ・ラスカサスから見学ツアーも出ています。サンクリストバル・デ・ラスカサスから車で4時間ほどの場所に、ジャングルの真ん中にある7世紀頃のマヤ文明遺跡、パレンケもあります。こちらもツアーがあるので訪れるのもいいでしょう。