桃花源里人家と中国画里郷村
こちらも宏村。西逓と宏村は家並み全体が世界遺産に登録されており、この中で人々は日々の生活を送っている。外には田園と山岳が広がっている
西逓の路地。道は細く、入り組んでいる
イ県は四方を山に囲まれ、その山々はかつて「イ山」と呼ばれたが、現在は「黄山」と呼ばれている。中国の名勝がすべて集まっているといわれるあの世界遺産「黄山」だ。
奇跡的な景観に守られた盆地ということで、イ県は桃源郷のモデルではないかという噂が立ち、やがて「小桃源」の名を冠するようになる。特に西逓の異名は「桃花源里人家」。
また、まるで中国画を思わせる素朴な景色から、いまでは中国中から写生家を集めるにいたり、特に宏村は「中国画里郷村」といわれている。
桃源郷と西逓・宏村
西逓の街角。漆喰の白壁、灰褐色のレンガ、すがすがしい青空、水路を流れる清流……何気ない路地がたまらなく美しい
西逓の牌坊
これ、世界のどこでも同じなのだけれど、田舎の村のやさしさというか、たとえば何かを忘れていっても盗まれることはないだろうな、困ってその辺に立っていたらきっと誰か助けてくれるだろうな、そんな安心感というか。
たとえば街角で子供たちが駆けている。おばあさんが水路で野菜を洗っている。お母さんが籠にお茶を入れて道端で売っている。井戸端会議に花が咲いている。軒下で麻雀をしている。こんな何気ない日常の光景がたまらなく美しい。
陶淵明が描いた桃源郷は天国でも黄金の国でも先進の国でもなく、人々が日々天地と会話しながら農地を耕す、ごくごく普通の農村だった。