世界遺産/アフリカ・オセアニアの世界遺産

キリマンジャロ国立公園/タンザニア

赤道に輝く天然の氷河――最初は誰もその存在を信じなかった神秘の氷河であり、間もなく消滅すると言われる悲しい氷河。人生の節目に「素人でも登れる七大陸最高峰のひとつ」を訪れて、この奇跡を見てはいかが?

長谷川 大

執筆者:長谷川 大

世界遺産ガイド

赤道直下に輝く神秘の氷河 キリマンジャロ

マウェンジ峰

山頂ウフル・ピークへ向かう途中に現れる氷河。左のゴツゴツした山は標高5,149mのマウェンジ峰 ©牧哲雄

赤道直下に広がる天然の氷河。しかしあと15年後には消滅の恐れさえある、人類の未来を占う氷河。赤道からわずか300kmながら山頂に氷河を抱く神秘の山、キリマンジャロ。今回はこのタンザニアの世界遺産を紹介しよう。

神が住まう山、キリマンジャロ

キリマンジャロの氷河と雲海

キリマンジャロの美しい氷河と雲海 ©牧哲雄

「キリマンジャロは標高六〇七六メートル、雪に覆われた山で、アフリカの最高峰といわれている。その西の山頂は、マサイ語で“ヌガイエ・ヌガイ”、神の家と呼ばれているが、その近くに、干からびて凍りついた、一頭の豹の屍が横たわっている。それほど高いところで、豹が何を求めていたのか、説明し得た者は一人もいない」(ヘミングウェイ著、高見浩訳『勝者に報酬はない・キリマンジャロの雪』新潮文庫、「キリマンジャロの雪」より)

モシから見上げたキリマンジャロ

麓の村モシから見上げたキリマンジャロ ©牧哲雄

霊長類を研究している動物学者によると、ごくまれに、夕方になると木に駆け登り、夕陽を見つめる猿がいるという。いまもかつても芸術を持たない民族は存在せず、あらゆる民族が絵や音楽や料理といったアートを愛し、夕陽を美しいと感じ、その美に神(神秘)を感じて生きてきた。

ヌガイエ・ヌガイ――マサイ語で「神の家」。

かつてキリマンジャロ辺近に暮らしていたマサイ族たちは雪や氷を見たことはもちろん聞いたことさえなく、この輝ける山の不可思議な白さ・美しさに魅せられて、この山を神の住まいと崇めて生きてきた。あるいは豹たちも? 
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