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30km/lを実現したマツダの新エンジンの秘密に迫る!(2ページ目)

燃費のいいクルマといえば真っ先に思い浮かぶのがハイブリッドカーだが、実はハイブリッドのようにモーターのアシストがなくても、まだまだエンジンの効率は上げられる。それを証明したのが、マツダの新技術『SKYACTIV』だ。

執筆者:宮島 小次郎

ハイブリッドでなくとも、30km/lの大台を超えることができる

SKYACTIV-D

SKYACTIVのディーゼル版「SKYACTIV-D」では、ディーゼルとは思えないほどの低圧縮比が採用される。今のところアナウンスはないが、国内へもぜひ導入を期待したいエンジンだ

 次に「SKYACTIV-D」と名付けられたディーゼルエンジンについてですが、こちらもガソリンエンジンと同じ圧縮比14に設定されているのがポイントとなります。ディーゼルはガソリンのように点火プラグによって混合気に点火するのではなく、高温高圧に圧縮した燃焼室内に燃料を噴射して、混ざった燃料と空気が自然に着火する(ガソリンエンジンで言うところのノッキング)特性を利用して爆発エネルギーを発生させています。

そのため、ディーゼルでは必然的にガソリンエンジンよりも高い圧縮比(通常16~18)が必要となるはずですが、そう考えると14という圧縮比ではいろいろと不都合が起こりそうですが、マツダではなぜあえてディーゼルの圧縮比を低下させたのでしょうか。

ガソリンエンジンに比べて、はるかに圧縮比が高いディーゼルはもともと熱効率に優れたシステムでしたが、最も強い爆発エネルギーが得られるピストンが一番上まで上がった状態で燃料を噴射すると燃焼が不均一となることから、NOxやススを発生してしまいます。そこで、近年では効率よりも排ガスのクリーン化を重視して、爆発のタイミングをあえて遅らせる制御が一般的でした。

SKYACTIV-Drive

高効率を追求したATミッション、SKYACTIV-Driveはフルレンジでのロックアップを追求

そこでマツダでは、もともとの圧縮比を低くすることで、最も強い力が得られるタイミングに爆発させても、NOxやススの発生量を抑えられる設計としたのです。これは一見すると、従来のシステムと同じことをしているようにも見えますが、最適なタイミングで爆発させることで、同じ仕事量でもより効率的に爆発エネルギーを活用することができるようになるのです。

また、圧縮比が下がったことで、エンジン部品に求められる強度も低下します。それに伴って、ブロックのアルミ化やピストンの薄肉化、クランクの設計変更などを施すことで各部の軽量化が可能となり、エンジン内部の摺動部の抵抗をガソリンエンジン並みに抑えることができたといいます。

SKYACTIVボディ

SKYACTIVボディでは、従来比30%の剛性アップと8%の軽量化を両立する

もちろん、ディーゼルの圧縮比低下はメリットだけでなく、始動性の悪化や暖機運転時の失火などのマイナス要素も含んでいますが、マツダでは燃料の噴射タイミングをより精密に制御する、排気側バルブに可変バルブリフト機構の追加する、ターボチャージャーの設計を最適化するなどの対策を施すことで、そうした問題の解決に当たっています。

その結果、現行のディーゼルに比べて約20%も燃費を改善するとともに、尿素触媒やNOx吸着触媒など、最新のディーゼル車の価格アップに繋がっている高価な排ガス浄化装備を使用することなく、クリーンな排気性能も実現したのです。

こうしたエンジン技術と合わせてマツダでは、より高効率なトランスミッションや高い剛性と軽量性を両立したボディなど、クルマ全体の設計を見直すことでハイブリッドなどの特別な技術を用いることなく、燃費性能を高めることに成功しました。

その成果が実際どれほどのものかを表すデータとして、この新技術SKYACTIVを採用したデミオ(来春に登場予定)では、30km/lの燃費性能を実現するといいます。30km/lといえば、先日発表された新型マーチの27km/lを大きく上回るのはもちろん、ハイブリッドのインサイトと全く同じ数値です。これを見れば、従来の内燃機エンジンにも、まだまだ改良の余地はあり、それを突き詰めてゆくことで新たな可能性が開けるはず、と期待を抱かずにはいられません。

 

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