ストレス/仕事・職場のストレス(パワハラ・セクハラ等)

「就活ストレス」は自分を発見するチャンス(2ページ目)

就活は、「私の生き方」が問われる機会です。職業を決める際に知っておきたい「欲求段階説」について、解説します。

大美賀 直子

執筆者:大美賀 直子

公認心理師・産業カウンセラー /ストレス ガイド

「自己実現」にこだわりすぎると思わぬリスクが

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夢の道を選んだつもりが金勘定ばかりの毎日……

私が新卒就活をした90年代前半を振り返ると、当時は「自己実現欲求」で仕事を選ぶ人が多い時代だったと思います。安定を捨ててあえてベンチャー企業を選ぶ無頼派もたくさんいましたし、名だたる大手企業の内定を蹴って、山小屋でバイトをしたり、世界旅行に旅立つ冒険派も多かったです。

90年代前半に大学を卒業した人たちは、幼少のころから安定成長期の豊かな経済に浴し、青春時代にバブル経済を経験した世代です。どこかに、「日本で生きている限り、衣食住に困ること、まして貧困など経験するはずがない」という過信があったのかもしれません。

ところで、「自己実現欲求」にこだわって人生選択をすることは、夢を手にするチャンスが増やすメリットがあると共に、「落とし穴」にはまる危険を増やすデメリットもあります

たとえば、安定性の高い一流企業に勤めてきた人のなかには、突然脱サラをして、自分のやりたい道に進もうとする人も珍しくありませんが、経済的基盤をなくして夢を追うことは、即、生活苦の渦中に飛び込むことでもあるのです。

マズローの説によれば、「自己実現欲求」は暮らしも安全も、愛情も獲得し、評価も受けた末の究極の欲求として登場します。この究極の欲求である「自己実現」にこだわりすぎ、低次欲求を軽視するとどうなるのでしょう?

「明日食べるお米」「来月の家賃」といったすさまじい低次欲求のカルマにさらされ、執着してきた「自己実現欲求」が一瞬にして弾け散る……こんな現実が待っているかもしれません。

就職活動期は、短い期間のなかで自分の生き方を決めていかなければならないもの。それだけに迷いもあるでしょう。しかし、自分が「こう生きたい」と思う道が、実はどの欲求段階から発せられたものなのか、冷静に捉えてみることも自分らしい職業選択、人生選択のヒントになるのではないかと思います。
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