大都会・江戸で人気だった酒のつまみ、「竹虎」と「雪虎」
大都会、江戸。
多いときには1,483,000人の人口があったとか。季節の魚介類に恵まれた東京湾に、大きな河川が5本も流れ込む江戸は、実に肥沃で豊かな土地であり、完璧なリサイクルを行う、自足自給の都市であった。
高度な技術と知恵を持った職人が集まり、豊富な水資源を利用した水車があちこちにあり、さまざまな産業を営んでいた、まさに、一大職人都市。
職人たちの安らぎの場は、居酒屋。当時のプレミア酒は、なんてったって上方の「下り酒」(上方から江戸に輸送された酒)。上方から陸路や海路で品川に集まり、そこからは「せどり船」で新川から馬喰町あたりに荷揚げされる、いわゆる、伊丹・灘、京・伏見の名酒だ。このプレミア酒が飲めないときには、川越、久喜、千葉、厚木あたりの「地廻り酒」を飲む。
居酒屋が最も多かったのは天明の頃で、なんと、消費量は、毎晩一人あたり6合だったとか。もちろんこれは料理に使われた分も入っているが、それにしてもすごい。
豊富な肴に恵まれた江戸の居酒屋で、庶民が愛したつまみはなんだったのか。これが実に粋でシンプル。つまみの名前は「竹虎」と「雪虎」。さて、どんなものを想像するだろう?
答えは、↓の写真。
上が「竹虎」。
下が「雪虎」。
はい、ご覧の通り、厚揚げだ。
焼き格子で焦げ目をつけて焼いた厚揚げに、青葱をふりかけたものを「竹虎」。大根おろしをかけたものを「雪虎」となる。
揚げの黄色い生地に茶色の縞模様がまるで「虎」の模様のように見えるところから名づけられている。日常の何気ない料理にも、ちょっと気の利いた名前をつける遊び心が、江戸人の粋さかもしれない。
ちなみに、とろろに粉状の青海苔と鶉の卵を落としたものを「昼の月」と呼んだそうな。明るい空に淡く輝く月の様を、一皿の料理に見て名づける。これまた、粋ですなぁ。
場所は、銀座。「180種のSAKEと全国の旨い食材を、女性きき酒師のサービスで堪能できる「SAKEダイニング」がコンセプトの『夢酒(ムッシュ) みずき』だ。
上の写真は、まさにここのもの。メニュー名はひらがなで「たけとら」と「ゆきとら」。どちらも600円。
江戸に思いをはせながら、まだまだ知られていない魅力のある「地廻酒」を頼むのもよし、ますます進化を遂げている下り酒を頼むのもよし、宮城塩釜「浦霞」のような現代の人気酒を味わうもよし。
半分食べたら、ゆず胡椒やコーレーグース(泡盛に唐辛子を漬け込んだ沖縄の調味料で、ここには常に置いてある)をかけて、味にアレンジを加えてもいい。ぜひ、お試しを。
■「夢酒 みずき」情報
- 住 所:東京都中央区銀座6-7-6 ラペビルB1
- アクセス:地下鉄銀座駅 B5出口 徒歩3分
- JR有楽町駅 徒歩5分
- 電 話:03-5537-1888
- 営業時間:
- 月~金:17:00~23:00(L.O.22:00、ドリンクL.O.22:30)
- 土:17:00~22:00(L.O.21:00、ドリンクL.O.21:30)
- 定休日:日曜・祝日