メンタルヘルス/(読み物) 文化依存症候群・地域特有の病気

ススト(中米):トラウマで魂が抜ける病気

心の病気の中には、その人の属する社会や文化の影響を強く受けるものがありますが、メキシコやグアテマラでは、怖い目にあった後、病気になるスストと呼ばれる心の病気があります。

中嶋 泰憲

執筆者:中嶋 泰憲

医師 / メンタルヘルスガイド

スストとは?
怖い目に合って、魂が体から抜けてしまうのがスストの原因と信じられています
心の病気の中には、その人の属する社会や文化の影響を強く受けるものがあり、文化依存症候群と呼ばれています。

代表的なものとして、突然、ナイフなどで無差別に人を殺傷してしまう、東南アジアで見られたアモックがありますが、人前で緊張してしまう、対人恐怖症は、実は、私達の文化特有の心の病気と考えられていました。

今回は、メキシコやグアテマラなどの中央アメリカで見られるスストと呼ばれる心の病気を紹介したいと思います。


スストは魂が抜けてしまう心の病気

私達は何かショッキングな事に遭遇した後、病気になる事があります。中央アメリカではこれをスストと呼びますが、ススト(susto)はスペイン語で驚愕や恐怖を表します。

例えば、馬から落ちてしまった、恐ろしい蛇を見た、身近な人が目の前で亡くなった、動物に襲われた…などショッキングな体験後、以下のような症状が出現します。

  • 不眠
  • 食欲不振
  • 下痢
  • 気が抜けたようになる
  • 気分の落込み
  • まぶたの痙攣などの筋肉の不随意運動


中央アメリカには、これらの症状の原因は魂が体から抜けてしまった為と信じる文化があります。私たちも何がショックを受けて、がっくりしてしまった時、魂が抜けたような状態になる事があります。スストを治す為には、離れてしまった魂を元に戻さなくてはならないと信じられています。

>> それでは、魂を戻す為にはどうするのでしょう? 次ページへ>>
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