魚に含まれる不飽和脂肪酸DHAが、心疾患やアルツイマー病の予防、また脳の記憶力改善、集中力向上などに効果をもたらすなどで世界的にも注目されていますが、近年は躁うつなどの症状にも有効だと言われ、ますます注目度がアップしています。
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n-3系脂肪酸を含む食べ物……p.3
魚を食べるほどうつ病のリスクが低下
「おさかな天国」という唄が流行りましたが、10年あまり前からイギリスの栄養学者マイケル・クロフォード博士が、「日本人の知能指数が高いのは魚を食べているから」と魚を食事にとりいれることを推奨していました。サカナを食べる=IQやテストの点が上がるとは言えませんが、サカナに含まれるDHAという成分が、脳の神経細胞などを活性化する作用があるので、低下している脳の記憶力を改善したり、集中力が向上すると言われています。他にもDHAは、心疾患の予防やアレルギー改善にも役立つということで、欧米などでもサカナを食べましょうと推奨されています。
たとえば、フィンランド・クオピオ大精神科のA・タンスカネン医師らのグループが男女市民約3,000人(25歳~64歳)を無作為に抽出し、回答が得られた約1,800人について分析したところ、週に2回以上魚を食べる人は、そうでない人に比べて、うつ病の危険率が0.63倍と低くなっている結果がでました。
魚を食べるとなぜうつ病にならないのでしょうか?
どうやら魚に含まれている「n-3系脂肪酸」であるDHAやEPAが、精神の安定にかかわる神経細胞に働いて、ストレスを緩和する働きがあると見られています。例えば、魚に含まれている脂肪酸「EPA」、「DHA」の血中濃度が高い人は、低い人と比べて自殺未遂を引き起こす危険度が大幅に減ることが、日中共同の疫学調査でもわかりました(2002年2月~7月調査)。統計的には、EPAが濃いグループは低いグループより自殺未遂の相対的リスク(危険度)が8分の1で、DHAの場合は同リスクが5分の1でした(2004年10月18日/日経産業新聞)。
さらに妊婦がn-3系脂肪酸を多く含む魚を食べると、出産前後のうつ病を予防するという報告もあります。National Institute on Alcohol Abuse and Alcoholism研究グループが、イギリス女性11,721人のデータを分析したところ、妊娠3期にn-3系脂肪酸を多く摂ると、妊娠後8カ月までにうつ病に罹る危険性が低くなると報告しています。
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