京野菜の一つ、「壬生菜」。独特の香りと辛味があります。 |
伝統野菜はなぜ姿を消していたのか?
昭和40年頃からの高度経済成長時代、都市に人口が集中するようになると、その需要を満たすために、野菜が大量生産大量消費されるようになりました。また流通システムも発達し、食品が日本全国どころか海外からも遠距離輸送されるようになると、輸送しやすい形や大きさが均一の野菜が好まれるようになりました。さらに野菜の種そのものも在来品種からF1品種(1代交配)にとってかわって生産性が向上し、また季節を問わずいつでも安定供給できるようになりました。
こうした背景から、個性豊かな伝統野菜は、栽培時期が限られていたり、手間がかかったり、規格にあわないなど経済効率が悪いことから姿を消していったのです。そしてそれを食べる食文化の多くも忘れられつつありました。
伝統野菜は地産地消から
伝統野菜は、もともとそれぞれの地域に独特のものがあったもの。例えば、泉州なすを関東の土地で育てても、決して泉州なすのようにはならず普通のなすになってしまうとか。まさに人と同じで「身土不二」、環境と切り離せないものであり、その土地の気候風土の条件によって独特の味や香り、色がうまれるのです。こうした風味や色、アクのもとが抗酸化成分などですから、改良されてアクや風味が薄い野菜よりも、有効成分が高いのはうなずけますね。経済効率のみで切り捨てられてきた伝統野菜が見直され、農業の知恵、そして伝統の食文化を後世に伝えていくことは、たいへん大切な取り組みです。生産者や行政は、各地で積極的に取り組む姿勢が見られるのですが、少し私は心配なことが・・・。
たまにはおいしく珍しい野菜も食べてみたい。それはよいでしょう。でも、今のように流通が発達していると、少し歪んだ現象もみられます。例えば、カラダによいからと人気のゴーヤーが冬でもスーパーで売られているのをよく見かけます。本来ゴーヤーは、暑い地域あるいは時期に栽培されるもので夏バテを防ぐ作用があるのです。もちろん他にも生活習慣病予防に働く効果もあるのですが、寒い時、寒い地域で南国の野菜や果物を食べ過ぎると、水分やカリウムが多く、カラダを冷やしてしまいます。
野菜の健康効果も、地産地消に本来の意味があるのです。「伝統野菜」を単なる一時的な健康ブームの商品として扱わず、生産者・流通業者・消費者がともに大切な宝物として受け継いでいきたいと思います。
■関連リンク
●京の伝統野菜はヘルシー野菜(京都府)
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