不妊手術の時期
欧米では、近年シェルターなどで保護された月齢の低い子猫を新しい飼い主に渡す前に手術することが多くなってきています。今のところ、多くの手術症例やそれを行った獣医師、その後の飼い主からのアンケート結果によると、生後2ヶ月前後で手術されても何の問題もみられていないそうです。幼いうちに手術を行うメリットは、傷の治りが早い、心理的な影響が残りにくいといったところらしいですが、生後3ヶ月以内の子猫の手術は、麻酔量の確認、出血量、組織がまだ幼いなど、大人猫とは違う小児科的な技術と知識が必要になります。最新の医療技術を熱心に勉強されている国内の獣医師もたくさんいらっしゃいますが、低年齢での手術に関しては獣医師とよくご相談ください。
一般的にオスもメスも生後6ヶ月以上、または体重が2kg以上であれば、不妊手術ができます。メスの場合、最初の発情前に手術した方が防げるとされている病気があります。体重や体調に問題がなければ発情前に手術の計画を。
以前は若いうちにオス猫の手術をすると、泌尿器系の病気にかかりやすいといわれていました。泌尿器が完全に成熟していない尿管などが細いうちに手術をすることが問題視されていましたが、現在の獣医学研究発表をみると、オス猫の低年齢での不妊手術と、泌尿器系の病気の因果関係はないと書かれています。
体力的に問題がなければ、何歳で手術を行ってもかまいませんが、手術をしていない子が高齢になってから子宮蓄膿症を併発したので緊急手術をしなければ命に関わる!という状況もあり得ます。その時、麻酔に耐えられる体力があれば良いのですが、場合によっては麻酔がかけられないこともあるでしょう。色々なことを想定すると、不妊手術は若くて体力のあるうちに済ませておきたいです。
間違って伝えられている情報の一つに、手術は一度でも出産させてからの方がいいというものがあります。これには全く根拠がありません。
発情中に手術をしたがらない先生が多いことは事実ですが、手術ができないというわけではありません。発情中は子宮や卵巣の活動が活発化して腫れている状態なので出血量が多くなりやすい、安全性を考えるとその時期は避けた方が無難と考える獣医師が多いのです。
不妊手術の不安
どこの動物病院でも不妊手術は経験豊富でしょうから、手術に伴う危険性は少ないと思われますが、麻酔に伴う危険はゼロとはいえません。麻酔に関しての危険率は、信頼できる先生のもとで術前検査をきちんと行うことによって、かなり低くなります。私は常々獣医師もサービス業だと考えています。飼い主と獣医師は双方が信頼関係を保ち、安心・納得しあえる関係であって欲しいです。疑問に思うことは、手術前にきちんと確認しておきましょう。