爪切り、歯磨きなど猫のお手入れの基本
猫の爪切り、耳掃除、歯磨きなど、「手入れ」の基本!
<目次>
猫は自分の身体を自分で舐めてきれいにすることができる動物です。自分でキレイにできるのだから、同居人=飼い主が特に手入れを行わなくてもよいかというとそうではありません。では、猫にはどんなどの程度のお手入れが必要でしょう?
猫のお手入れを行うことで、同居人は猫の体を自分自身の手や、目で確認できます。仮に猫の体のどこかに異常があれば、早期発見ができるわけです。猫のお手入れは猫をきれいにするだけではなく、猫の健康状態をチェックするための大切な日課ともいえるでしょう。
猫のお手入れの基本として、以下のようなものがあります。
- 爪切り
- 耳掃除
- 目と目の周りのケア
- 口の中と歯の手入れ
- お尻周りの手入れ
- コーミング(クシを使って毛を梳かす)
- シャンプー
猫の爪切り
血管を気づ付けないように気を付けましょう
爪を切る道具はハサミタイプ、ギロチンタイプなど各種ありますが、ご自分の手に取ってみて使いやすいと思うものをお選びください。人間用の爪切りを使うと猫の爪が割れてしまうことがあるので、猫用として販売されているものを使ってください。
このほかには、もし爪を切りすぎて出血した時に使うクイックストップなどの止血剤、おとなしく爪を切らせない猫をカバーするバスタオルなど、必要に応じてご用意ください。
- 猫の爪の構造
猫は爪をとぐことで一番外側の爪(堅い角質)をはがし、その下にある尖った爪を出します。猫の爪切りをする時に、1本ずつの爪の伸び方を観察してみてください。同じ日に同じように爪切りをしても、伸び方のスピードが違っているはずです。よく使う爪はそれだけ伸びるのが早く、あまり使われない爪は伸びるのが遅くなります。子猫や運動量の多い若猫時代は7~10日に1回程度、高齢になると2~3週に一度の爪切りが目安となるでしょう。
- 初めての爪切り
初めて猫の爪を切る方は、どこまで切ればよいか不安に思われるでしょう。また、切りすぎて出血すると、猫も痛い思いをします。日頃の「しつけ」は、なかなか覚えてくれない猫ですが、このような痛い思いは一度で記憶し、次からはおとなしく爪切りをさせてくれないことも。不安を感じる方は獣医さんにお願いして、どこまで切れば良いか教えてもらいましょう。
- 猫の爪の切り方
猫をしっかり膝の上に抱き、自分の親指と人差し指で切ろうとする指の肉球を軽く押すと爪が外に出てきます。爪を明るい光で透かしてみると、神経と血管が通っている部分が見えるはずです。半透明でかすかに赤い筋が入っているところは生爪なので切らないように! 先端の白くなった部分は死んでいる組織ですのでここを切りますが、生爪から最低でも2mmは空けて切りましょう。最初はほんの少し、爪先をちょんと切るだけでOK。慣れてきたら徐々にもう少し深く切ってみましょう。
爪切りに限らず、押さえつけられることを嫌う猫は多いです。おっかなびっくりで抱き上げようとする飼い主の緊張感を感じ取り、抱っこされた時点で、「いやぁ~~」と身をよじらせて逃げる子もいます。ひどく嫌がる子を無理矢理押さえつけていると、しなくてもよい怪我をする可能性がありますし、猫にとって「抱っこ=イヤなことをされる」と覚えてしまいますので、抵抗された時は様子をみながら、無理そうだと思ったらすぐに猫を放しその場は諦めましょう。でも、ある程度は「爪切りはどうしても、あなたと私のために必要なの! だから我慢してね」と納得させる飼い主の強さを猫に示す必要もあります。
バスタオルで猫の首から下をすっぽりくるみ、1本ずつ手を出して切るのもよいでしょう。それでもひどく抵抗する場合は、四肢の爪を一度に切ろうとしないで、今日は右の前の足だけ、明日は左前足と時間差で攻めてみてください。中には寝ている間に、そぉ~~っと1本ずつしか切れない猫もいます。
猫の耳掃除
どんなときに耳かきが必要?
粘着系の耳あかが出やすい猫は、耳の中が汚れやすく酵母菌が繁殖しやすいので外耳炎を起こしやすい体質を持っています。耳が折れているスコティッシュフォールドは、その姿形故に通気性が悪く、耳の病気に悩まされる子が多いようです。そのほか、外出自由の猫は別の猫と接触して耳ダニというお土産をもらってくる可能性もあります。耳の中のチェックもお忘れなく!
- どんなときに耳掃除が必要なの?
耳掃除は、表面的にひどい汚れが目立たない猫には特に必要ありません。しかし、外耳部分に黒っぽい耳あかが目立つ猫は、カット綿などで指が届く範囲だけキレイに拭き取る必要があります。獣医師から入手できる耳掃除用の薬液を利用すると、殺菌作用もありスムーズに耳掃除できます。我が家では「Virbac Epi-Otic」という薬液を数滴カット綿にしみこませて使用しています。日頃きれいな耳でも、シャンプー前には必ず耳掃除をしてください。耳掃除をしないでシャンプーすると、耳あかがふやけて内耳に入り炎症の原因となりかねません。先に耳掃除をしておきましょう。
よく綿棒などで耳の中(内耳)までキレイにする方、獣医師によってはそのように指導される先生もいらっしゃいますが、ガイドはこれはお勧めしません。というのも、猫の内耳は特殊な形状になっており、また粘膜が非常に柔らかいので、綿棒を使用することで内耳・鼓膜を傷つける可能性があるからです。どうしても内耳まで掃除しなければならないような場合は、獣医師に処置してもらうことをお勧めします。
- こんな時は獣医師に相談!
耳あかがひどく、毎日のように掃除してもキレイにならない場合は、耳ダニが発生していたり、外耳炎や内耳炎を起こしている可能性がありますので、早めに獣医師の診断を受けてください。
また、耳の中が表面的にきれいに見えても、猫が耳を掻く・頭を振る・耳を気にするなどの様子を見せる場合は、内耳に異常がある可能性があります。こちらも早めに獣医師に相談することをお勧めします。
目をきれいに
目やにが気になったら
特別な薬品は必要ありませんが、ひどくこびりついている場合はカット綿にホウ酸水をしみ込ませてぬぐってもよいでしょう。目の周りをさわられると嫌がる猫もいますので、抱っこして膝の上でリラックスさせてから素早く、目の中にカット綿が入らないよう注意してください。
いつもセルフグルーミング(毛繕い)をきっちりやっているのに、なぜか目やにがついてるというように、自分でする顔のお手入れが下手な子もいます。猫自身は黒く固くなった目やにがこびりついたままでも平気な顔をしていますが、この目やにも気がついたら取ってあげましょう。そのままにしておくと、皮膚の弱い子は皮膚炎を起こすかもしれません。
目やにが乾燥した色の濃いものであれば病変ではないと思われますが、もし透明の水のようなもの、乳白色~黄色がかった粘着性のものでしたら、風邪などの細菌感染が疑われますので、すぐに獣医師にご相談ください。
猫の歯磨き、口の中の手入れ
お口のケアも気にかけたい
- 日頃、気をつけてチェックしたい口の中の様子
毎日の生活の中では、歯茎の色がきれいなピンク色かどうか、歯茎を指で押してはなした後すぐにピンク色に戻るか、特別おかしいと感じるような口臭はないか、食事を食べにくそうにしたり、涎が出ることがないか、などを特に気をつけて観察しましょう。
- 食事と歯の関係
ドライフードの方が好き、という猫の方が比較的歯がきれいな子が多いようです。猫はあまり噛んでものを食べる動物ではありませんが、固いドライフードは、適度な刺激があって歯垢がつきにくくなるようです。また歯垢予防に特化したオーラルケア対応のフードも発売されています。
- 歯磨きに挑戦!
缶詰の食事がメインの猫は歯が汚れやすくなりますので、永久歯に生え替わったら歯のお手入れに挑戦してみてはいかがでしょうか? 週1~2回で、少し水で湿らせたカット綿を指に巻き付けて歯の外側を軽くこするだけでOK。歯の内側には歯石がつきにくいので、外側を。前歯(門歯)にもほとんど歯石がつきません。奥歯は形が複雑なだけに、どうしても歯石が溜まりやすいのでそこを重点的に磨いてあげましょう。猫用の歯磨きジェルなども販売されていますが、猫によって味の好き嫌いがあります。何もつけないカット綿でこするだけでも効果はあります。
- ひどい歯石がついてしまった場合
ドラッグストアで入手できるスケーリング用の器具を歯茎と歯石の境目に当て、力を入れて引っ掻くと歯石は簡単に取れますが、一つ間違えると大出血! 痛い思いをした猫は二度と口を見せてくれなくなるかもしれません。猫も歯垢が溜まってくると、人間と同じく歯周病にかかり、最終的には抜歯しなければならなくなります。ひどく歯石が溜まっている猫は、そうなる前に獣医師に相談し歯石除去を行って頂きましょう。
お尻をキレイに
猫は怖い思いをしたり、イヤな目にあったりするとお尻から非常に臭い液を噴出させることがあります。我が家ではお尻近くをコーミングするとこの臭い液を飛び散らす子がいて、この子をコーミングする前には必ず肛門嚢絞りをしておきます。この臭い液は、肛門のまわりにある臭い袋から出る液状の分泌物。イタチやスカンクが攻撃にあった時に出すものと同じで、肛門のすぐ脇、時計の文字盤でいうと4時と8時付近の穴から出します。肛門嚢からの分泌物は、通常は便などと一緒に排泄されますが、下痢や便秘、肥満、高齢、またりストレスで出にくくなると、袋の中に大量に溜まってしまいます。そして細菌感染などで炎症を起こすと肛門嚢炎になってしまいます。
そこで定期的に肛門嚢を絞り、この液を出してあげるのですが、なにしろ異常に臭いので、肛門嚢絞りが一番最適なのはシャンプーのときです。頻繁に猫をシャンプーしない場合は、月に1回程度コーミングの時に肛門嚢絞りに挑戦してください。
- 肛門嚢の絞り方
用意する物はティッシュペーパだけでOK。絞った後をぬぐうために、ウエットティッシュがあればよりベターです。
肛門嚢絞りを嫌がる猫が多いので、ひとりが猫の頭と身体を押さえて、もうひとりが絞る、というように二人で協力した方がやりやすいでしょう。絞る人は、片手でしっぽを根本から持ち上げてティッシュを数枚肛門にあてがい、時計盤の4時と8時のあたりを斜め下から押し上げるように、あまり強くない程度の力を入れます。肛門嚢に分泌物がたくさん溜まっている場合は、しっぽを盛り上げた段階で肛門嚢の穴がふくらんで見えますし、馴れると指でもふくらんでいるのが感じられます。分泌物がたくさん溜まっているときは、ピュッと勢いよく飛び出してきますので、出終わるまでティッシュペーパーを放さないように! 何度も書きますが本当に臭いので、分泌物が出た時は猫の身体につかないようにキレイにぬぐってください。もし、肛門嚢の穴やふくらみが感じられず、分泌物も出なければ溜まっていないということなので、無理に出そうとしなくても大丈夫です。
セルフグルーミングで表面的にはキレイに見える猫でも、家族としての健康を考えるのであれば、様々なお手入れが必要になります。すべてのお手入れは一度に、そして毎日繰り返さなければいけない、というものではありません。どのお手入れも基本的には猫があまり好まない要素を含んでいますので、猫が一番リラックスしている時、そして同居人も気持ちに余裕がある時に少しずつやってください。猫の身体のあちこちを何度も触ることで猫の健康状態がわかり、そして猫との親密度も増していくでしょう。
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