アパートマンション経営/収益をアップする貸し方・テクニック

立退きで必要な借地借家法の知識

先日クライアントからアパートの建替えを考えているという相談がありました。まず必要なのは立退き。立退に関する基本的な流れを知って対処すると、入居者との交渉が驚くほどスムーズに行くことでしょう。

浦田 健

執筆者:浦田 健

アパート・マンション経営ガイド

まず借地借家法を理解しておこう!

先日当社でサポートしているクライアントからアパートの建替えを考えているという相談がありました。

詳しく話を聞いてみると、

・築年数が40年を超え、地震で建物が崩れてしまうのでは?と心配・・・
・修繕する箇所が多く、修繕費用がかさむ。特に水まわりの修繕が多い・・・
・空室が目立ち、賃料回収率が低下している・・・

とのことでした。

立地条件や土地面積を考えると建替えにより、高収益物件にすることができそうです。その場でクライアントに概算収支を提示すると、建替えに大賛成のようでした。

「まずは立ち退きからですね。」

と伝えたところ、

「大変そう。」
「お金がかかるんじゃないですか?」
「長いこと住でいる人を、追い出すようなことは私にはできない・・・」

という反応でした。確かに経験がないと立ち退きをどう進めていいか、分からないですよね。

そこで今回は立ち退き交渉の進め方について、お話したいと思います。基本的な流れを知って対処すると、入居者との立退き交渉が驚くほどスムーズに行くことでしょう。

借地借家法の契約解除用件を理解しよう!


「借地借家法」とは、簡単に言うと、建物と土地について定めた特別な賃貸借契約の規定です。立退き交渉の第一歩として入居者に対し、賃貸借契約の解除通知を行うのですが、
借地借家法を理解しておかないと交渉の際、自分が不利な立場へ置かれてしまう可能性があるのです。

そのため、具体的に立退きに関わる条文として、借地借家法27条1項、同28条を押さえて理解しておかなければなりません。

第27条
「建物の賃貸人が賃貸借の解約の申入れをした場合においては、建物の賃貸借は、解約の申入れの日から6月を経過することによって終了する。」

第28条
「建物の賃貸人による第26条第1項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(賃借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合における、その申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。」

これはつまり、

「大家側から解約を申し入れる場合は、正当な事由がある場合に限る。ただし、その場合であっても6ヶ月前に解約の申出をしなくてはならない。」

ということです。では正当事由に該当する一般的なものには何があるのでしょうか?

1.大家自ら居住する為に、建物が必要な場合
2.建物の築年数が古く、老朽化により取り壊しが必要な場合
3.立退き料の支払いを申し出る場合
※立退き料は正当事由として不十分な場合、それを補うべき金銭にあたる。

といったことが上げられ、これらを総合的に判断した上で、正当事由として認められます。しかし正当事由に当たるかどうかは、入居者の住居年数、健康状態、職業、年収等も考慮しなければならない為、最終的に裁判によって結果を示すしか他ありません。

過去の判例で、「家主側からアパートを建替える」ということが「正当事由として認められない」と判決されたことがあります。借地借家法は基本的に「一般的に弱い立場である借家人の保護を図ったもの」とされ、建替えという大家側の都合は正当事由として認められなかったのです。

立退きの解決手段として裁判を行うには、費用が高くつき、判決まで時間がかかってしまいます。面倒なことが多い為、裁判を行うことは現実的ではありません。

立退きのステップ


そこで裁判を避け、円滑に立ち退かせることを考えます。具体的には解約通知文を作成・送付し賃貸借契約解除の意思表示をすることから始めます。この解約通知文の内容は上記借地借家法第27、28条の内容を踏まえて作成するのです。

そして
1.解約通知文を送付内容証明記録で郵送
2.入居者へのコンタクト
3.転居物件斡旋
4.明渡し

以上のステップを踏んでいくことになります。今回は立退きに伴い、借地借家法第27条と第28条の知識について解説しました。次回は解約通知文の内容及び、その後の流れについて解説していきたいと思います。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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