人がウィンディゴになる時
呪術師に呪いをかけられたり、ウィンディゴに咬まれた時、人はウィンディゴになるそうですが、多くの場合、冬季、積雪で外部から孤立し、食料の貯蔵が乏しい時におきます。最初の兆候は気分の落ち込みと食欲の低下です。その後、ウィンディゴに取り付かれたという思いが頭を占めるようになり、「このままではウィンディゴに変化してしまう」という強い恐怖と不安感と共に、次第に周りの人が食べ物に見えてきます。
やがて、ウィンディゴに完全になってしまうと、周りの人を襲って、食べてしまいます。ウィンディゴになった人は、部族から処刑されるか、時には、ウィンディゴに完全になる前に自殺してしまいます。
ウィンディゴになった人を考察すると
ウィンディゴになった人はウィンディゴ精神病(windigo psychosis)と呼ばれていて、アルゴンキアン族に見られる、文化依存症候群の一つとなっています。餓えに対する恐怖がストレスとなり、民族に伝わるウィンディゴの話の影響を受けて、ウィンディゴに取り付かれ、人を食べるという特徴的な症状が出現したのだと思います。
しかし、ウィンディゴの物語が生まれた、そもそもの背景には、アルゴンキアン族が飢餓に直面した時、人肉を食べて、乗り切ったという悲劇的な経験があるのではないでしょうか。飢餓状態になると、人間の生存本能は「人肉を食べろ」、人間の理性は「そんなことはいけない」となり、心に強い葛藤が生じると思います。
本能的の恐怖が支配的になった時、飢餓の他にも、経済の大恐慌、自然災害といった時があるでしょうが、理性的でない行動を取ってしまうことがあります。あってはいけない事が起こってしまったら、人々がそれを受け入れる為に、ウィンディゴのような物語が必要になるのではと思います。
また、ウィンディゴ精神病には栄養問題もあると考えられています。冬季の食料の乏しい時には、ビタミンが不足しがちで、精神状態に変調が生じやすくなります。ウィンディゴになりかかっている人には、ウィンディゴの氷の心臓を溶かす為に、熊の脂を与え、治療します。熊の脂には、ビタミンが多く含まれていて、ビタミン不足を補正しているのかもしれません。
ところで、アルゴンキアン族の親は、子供に対して、一人で森に行かないように、ウィンディゴの話を聞かせます。「森に一人で行ってはダメだよ。森にはウィンディゴがいて、食べられちゃうから」
なお、ウィンディゴは、実はビック・フット(big foot)であると言う人もいます。
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