具体的にどのように、制度(規程)を作るのか、プロセスを解説します。まず、賃金規程に記載する内容の確認をし、賃金規程に定める事項を次のように分類します。


1.必ず記載する事項を決める

賃金規程作成のプロセスを確認しましょう

賃金規程作成のプロセスを確認しましょう

絶対的記載事項(労働基準法で記載することが決まっている事項)は次の項目があり事業所ごと必ず記載します。

■賃金の決定および計算方法
基本給・手当などの賃金の構成要素を記載します。そこでは年齢給・勤続給・職能給など自社の制度ではなにを重視して構成しているかを明確にします。計算方法では、時給制・日給制・週休制・月給制・年俸制など、実施しているものを全て記載します。欠勤・残業手当などの計算方法。年次有給休暇や育児休暇・介護休暇を取得した場合の賃金などを明確にすることです。

■賃金の支払方法
同法で、賃金の支払の5原則があります。これを踏まえて記載してください。
賃金が物などで現物支給(但し条件により通勤定期券などの現物支給などが許されるケースあり)されたり、本人の債権者に対して支払われたり、全額ではなく少しづつ分けて支払われたり、間が相当期間空いて支払われたり、また月ごとに支給日が変わったりすると、労働者の生活に直接影響を及ぼします。このようなことでは、従業員と会社の信頼関係が崩れてしまいます。

その5原則とは、

  1. 通貨で支払うこと
  2. 従業員に直接支払うこと
  3. 全額支払うこと
  4. 毎月1回以上支払うこと
  5. 毎月一定期日に支払うこと

です。下記に記載の締切日で締めた賃金は全額支給されなければなりませんが、毎月1回以上となっていますから、例えば毎月何回締切日を設けても構わないことになります。

ただし、この5原則には例外もあります。例えば、賃金を口座振込みをする場合には通貨で支払わなくても構いません。実際の企業実務では通貨で払うことは現実的ではありませんので、口座振り込みが多いことでしょう。ただし、必ず従業員個人ごとに同意を得てから行うことが義務づけされています。また賃金から所得税や社会保険料を天引きすること、賞与などは毎月一定期日に支払う義務がないことなどもあります。

■賃金の締め切り
給与計算は、毎月の締切日と支給日を明確にすることです。基本給や手当などの固定的部分と残業手当などの変動部分の締め日を変えて計算している企業もありますので、疑義が生じないように記載します。

■昇給に関する事項
昇給があるのかないのか、ある場合はどういうルールで昇給するのか、明確にすることです。例えば毎年4月が昇給時期だとされていれば、そのルールを記載します。企業業績によっては毎年必ず昇給するとも限らないかもしれません。その場合、昇給しない可能性の有無を明確に記載することでトラブルを避けることができます。

2.事業所単位で定めている事項を決める

相対的記載事項は、その事業所で決定していることがあれば記載しなければならない事項のことで、次の項目があります。事業所ごとに別事業を行っていたり、人事制度を別制度としているところもありますので、必ずしも一企業体としてどの事業所も同じ記載内容とも限りません。

  • 退職金(退職手当)に関する事項
  • 臨時の賃金に関する事項
  • その他の手当(旅費等の手当)に関する事項
  • 最低賃金に関する事項
  • 労働者に負担させる食費、作業用品その他に関する事項
     

3.その他の事項を決める

絶対的記載事項と相対的記載事項以外の事項を、賃金規程に盛り込むこともできます。これは任意的記載事項ですから、各企業によって記載内容が異なります。

例えば、
  • 自社における賃金表(昇給のルールをまとめた表)
  • 賞与の配分基準表(成績評価に応じてどう配分するかのルール)
  • 退職金支給率表(勤続年数に応じた支給率の詳細表など)
規定条文だけでは、具体的に理解できないことがあるものです。こうした表形式を利用することで、透明性(納得性)を図ることができます。

賃金規程も就業規則の一部です。作成手順としては、就業規則の作成手順と同様の段取りを踏むことになります。

4.従業員代表の意見を聴く

1~3の記載内容について、従業員代表の意見を聞く。

5.意見書を添えて労働基準監督署に届出る

従業員代表の意見書を添えて労働基準監督署に届出ます。

6.作成した賃金規程を労働者に周知させる

労働者に周知することで、無用なトラブルをさけましょう。


私は、賃金規程は、経営者からの期待(メッセージ)をいかに伝えられるかだと感じます。労働基準法の確認(法令順守)をしながら、任意的記載事項などを使って、自社独自の制度を構築していきましょう。


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