自覚をしている人は10%前後? 歯ぎしりは一種の病気です
治せるものなら治したい! 男性だけではありません。歯ぎしりに悩んでいる女性もたくさんいます
欧米やアジアでの調査によると、歯ぎしりによる不快な雑音を自覚している人の割合は、子どもで10~20%、成人では5~8%、高齢者になると2~3%程度です。歯ぎしりは年齢とともに減少し、男女間に頻度の差はありません。
歯ぎしりには、遺伝的な影響が半分ほどあります。歯ぎしりを自覚する人の約半数では、家族や親戚に歯ぎしりを自覚している人がいます。また、遺伝子が半分だけ同じの二卵性双生児よりも、全く一緒な一卵性双生児のほうが、二人ともが歯ぎしりをする頻度が高くなります。さらに、歯ぎしりをする人の約90%は、子どものときにも歯ぎしりした経験を持っています。
胃酸の逆流が歯ぎしりの原因? 逆流性食道炎と歯ぎしりの関係
朝、胸やけやノドが焼ける感じは、ありませんか?
詳しいメカニズムは分かっていませんが、アルコールやタバコ、カフェインを摂ることで歯ぎしりが多くなります。薬では、うつ病の治療薬である選択的セロトニン再吸収阻害薬(SSRI)を飲むと、歯ぎしりが悪化することがあり注意が必要です。
以前は、「噛み合わせが悪いから歯ぎしりが起こる」と考えられていました。しかし今では、歯ぎしりによる痛みや疲労感が睡眠の質を悪くする可能性はありますが、歯ぎしりの直接の原因ではないことが分かっています。
最近注目されているのは、逆流性食道炎と歯ぎしりの関係です。逆流性食道炎というのは、横になったときなどに胃液が食道に逆流して、胸やけやムカツキなどを起こす病気です。逆流性食道炎の患者さんは睡眠中の歯ぎしりや噛みしめが多くなり、治療薬であるプロトンポンプ阻害剤(PPI)を飲むとそれが減ることが分かりました。もしかしたら歯ぎしりは、逆流してきた胃酸を胃に戻すために行っているのかもしれません。
歯ぎしりの弊害…歯が磨り減る・顎の筋肉痛・家族の不眠
歯ぎしりが激しいと、咀嚼筋(咬むときに働く筋肉)や顎関節、歯への負担が大きくなります。強くこすられるために歯や入れ歯の表面に凹凸がなくなったり、折れてしまうことがあります。また、目覚めたときに顎から頭にかけて、不快感や疲労感、痛みが出ることもあります。歯ぎしりをする本人が不眠になることはあまりありませんが、ベッドパートナーにはいい迷惑です。ヨーロッパで行われた1万人規模の電話調査では、週に一回以上、歯ぎしりをする人のうち、54%で歯や顎などに何らかの症状が出ています。内訳は、歯が磨り減っている人が23%、起床時の顎の筋肉痛が8%、同室者からの軋音の指摘が23%でした。歯ぎしりを減らすことは、家族のためにも必要なことのようです。歯ぎしりによる歯のトラブルについては、「意外な真実!歯ぎしりが歯の寿命を縮める」をご参照ください。
原因は不安? ストレス? 治したい方は歯医者さんへ
マウスピースがよく使われています
不安やストレスは歯ぎしりの原因の一つですから、リラクゼーションやストレス管理は重要です。せめて寝床に就く前の1時間はリラックスタイムにして、自分の好きなことを楽しんでください。布団に入ったら悩まず、「明日はきっといい日になる」と自己暗示をかけましょう。
通販などで買える軟性マウスガードは手軽に使えますが、長期的な管理にはやや不向きです。使用者の半数では、マウスガード自体がストレスとなって、歯ぎしりが増えることもあり要注意です。歯科で作ってもらう硬い口腔内装具(スプリント)は、上顎の歯を覆って歯ぎしりした時の機械的負担を減らすものです。ただし、必ずしも歯ぎしりが減るとは限らず、悪化させる症例もありますので、事前に歯科医とよく相談しておきましょう。
歯や顎の痛みが強いときには、非ステロイド性消炎鎮痛薬が処方されることがあります。血圧を下げる薬の1つであるクロニジンは、歯ぎしりを60%減らすと報告されています。ただし副作用として、起床時の低血圧やめまいを起こすことがあります。
先にも述べましたが、胸やけやムカツキがある人は、逆流性食道炎が歯ぎしりを起こしている可能性があります。かかりつけ医や消化器科で逆流性食道炎の治療を受ければ、歯ぎしりも減るかもしれません。
歯ぎしり以外に睡眠中に起こる異常現象については、「歯ぎしり・寝言・金縛り・悪夢」を併せてご覧下さい。
歯ぎしりの治療費については、「歯軋り(歯ぎしり)の治療費の目安」を参考にして下さい。また、「病院検索 歯科」や「病院検索 小児歯科」では、全国の歯科や小児歯科を検索できます。