1つひとつは軽くても、多く重なるほど動脈硬化を促進します。血流量が密接に関係する勃起にとって、動脈硬化をはじめとする血管障害は大敵。それだけに、メタボの要注意年齢はED(勃起障害・勃起不全)の要注意年齢とオーバーラップする可能性が高いのです。
40歳前後はイエローゾーン?
高血圧や糖尿病はEDのリスクを高める
(1)心理的作用の大きい心因性
(2)身体的障害が関係する器質性
(3)心因性と器質性が混在する混合型
――など、原因による分類がありますが、これらは必ずしも特定の年齢に偏っているわけではありません。
男性の場合、器質的には勃起機能が維持されているものの、加齢とともに生活習慣病にかかるリスクが高まることから、動脈硬化の進行による勃起機能の衰えも徐々に始まります。
年代でいえば、40代から50代はEDの原因となる高血圧や糖尿病の罹病率も高くなります。従って、メタボ検診の対象年齢である40歳前後をEDに差し掛かる“イエローゾーン”と考えてよいかもしれません。
EDのリスク高める高血圧や糖尿病
勃起は陰茎の海綿体に送り込まれた血液が性行為の終わるまで溜め込まれることによって成り立ちます。ですから、勃起を持続させるためには、陰茎の血管や神経が健康に保たれていることが前提となります。勃起のメカニズムを考えれば、血管や神経の果たす役割の大きさが分かるでしょう。ところが、EDになるとさまざまな原因で血液がうまく溜まらなくなります。血管障害や神経障害を招く危険因子はEDの原因にもなります。特に、血管障害から起こるEDは高血圧や糖尿病、喫煙のように、血管にダメージを与えることで引き起こされます。
もちろん、高齢になるほど動脈硬化の起こる割合が高くなるので、EDになりやすくなります。加齢に伴う男性ホルモン分泌の低下も、動脈硬化を促しているといわれています。血管障害は高血圧や糖尿病などがあると、より早く進行し、EDのリスクを一段と高めます。糖尿病は神経にも障害を起こすことがあるので、ダブルパンチです。
注意すべきは高血圧も糖尿病も、いわゆる生活習慣病であることです。これらを原因とするEDもまた、一種の生活習慣病といえるでしょう。
ED患者の年齢分布と症状の特徴
クリニックに来られる患者さんは40代と50代が多い
その中でも多いのは40代後半から50代前半で会社員の場合「中間管理職に該当する方々」という印象があります。この年代の男性は、男性更年期障害による男性機能の不調や性欲の減退、また、増え続ける仕事上の責任、プレッシャーやストレスが幾重にも重なってEDを引き起こしやすいのだと思います。このあとに、30代、60代、20代と続きます。
症状別にみると、20代では緊張でうまくいかない例が多く、30代から中折れの悩みが増えてきます。40代から50代までは中折れがほぼ大半を占めています。60代以上になると、中折れ以前に勃起の硬さが足りないとか、最初から勃起しないという悩みが増えてくる傾向があります。70代では、しばらく使っていないので自信がないという方が少なくありません。
70代以上での「潜在需要」は実際にはもっと多いと思うのですが、年だからと諦めてしまったり、インターネットをしないのでED治療薬の処方情報等をご存じなかったりというケースも多いようです。
射精時の快感は年齢とともに衰える?
この回の最後に、54歳の男性からの相談をご紹介しましょう。「今までは絶頂期にペニスが脈打ちながら射精して快感を得ていたのですが、最近は脈打つものがありません。精液の量も少なくなったようで、射精時のドクドク感もありません。加齢的な問題でしょうか」――。
同じような悩みを持ったり、体験をしたりした方も多いのではないでしょうか。このような場合、性行為自体に対する欲求の高さや心理的な背景も大きく関わっています。個人差もあるでしょうが、年齢による射精時の快感や精液量の減少はあると思います。最初はとてつもなく感動的だったゲームが、繰り返すにつれて、次第にさほど感動を覚えなくなるように……。
反論される方がいらっしゃるかもしれませんが、歳を重ねると味覚が落ちていくように、性感も衰えていくように思います。これからは勃起だけではなく、性交時の快感など、質の面への要求も高まると思います。未踏の領域ですが、それらの改善薬や治療法も発達するでしょう。
ともあれ、現状では、効果の高いED治療薬で自信をつけ、年齢のハンデを克服して豊かな性生活を営むことが精神的にも良い効果をもたらすと思います。
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