体の不調と同じように、心の不調も適切に病院受診を
何となく気持ちが浮かない……。気持ちの不調が続く場合、適切に対処することが大切です
例えば、ノドが痛く、咳や鼻水などの症状があれば、風邪を引いたかなと考えるでしょう。一方で、休みの日なのに朝から何もする気がせず、家でぼんやり過ごしてしまっても、気分の落ち込みはあまり意識しないかもしれません。実際、心の不調とはどんな状態を指すのか意外に曖昧な点があるのです。
心の調子が悪い時に適切に気付けるように、心の不調とはどのような状態であるのかを知っておきましょう。
心の病気の3分類……「気分障害」「不安障害」「思考障害」
心の調子がとても悪い場合、「心の病気」のことも考えられます。しかし一括りに「心の病気」といっても、その多くは「気分障害」「不安障害」「思考障害」のどれかに分類できるものです。それぞれの特徴と、いくつかの代表的な病名をあげましょう。■気分障害……うつ病など
気分が落ち込む。うつ病など
■不安障害……対人恐怖症など
初対面の人と会う時などに不安感が強まり、顔面紅潮、動悸、発汗といった症状が出るのが特徴的。対人恐怖症など
■思考障害……妄想性障害・統合失調症など
他人が自分に悪だくみをしているといった妄想にとらわれたり、妄想や幻覚などで現実と非現実の境界を見失ってしまうのが特徴。前者は妄想性障害。後者は統合失調症など。
また、心の病気は1回に1つしか起こらないとは限りません。例えば、対人恐怖症と同時に、気分の落ち込みが強いうつ病の診断をされるような場合もあります。
以下にそれぞれのカテゴリーでよく見られる心の症状をまとめましたので、あなたの心の健康状態をチェックしてみましょう。
心の健康状態をセルフチェック
A 気分障害的な症状□今まで楽しめていた事が楽しめない
□何をするにも億劫になった
□以前より活動的でなくなった
□頭の回転や動作が以前よりスローになった
□気分の変化が激しい
□物事に集中できない
□自責の念が強い
□性欲の減退
□睡眠の変化(不眠または過眠)
□食欲の変化(食欲不振または過食)
□自殺の事が頭に浮かぶ
B 不安障害的な症状
□不安感が強い
□イライラしやすい
□ある状況への恐れが強い
□まぶたの痙攣など緊張時に起きる身体症状がある
□発汗、動悸、顔面紅潮など不安や緊張が強い時に見られる自律神経系の症状がある
□集中力の低下
□不眠
C 思考障害的な症状
□そこにないものが見える
□聞こえるはずのないものが聞こえる
□疑い深くなった
□人の話がうまく理解できない
□考えがまとまらない
□他人が悪口を言っているように思える
一般的に、上記の症状に該当する箇所が多くあればあるほど、そして、日常生活に支障が生じていればいるほど、心の病気に近くなっている可能性があります。
深刻な場合は、精神科・神経科の受診を考えましょう。特に「死にたい気持ち」がある場合は心の調子の悪さが重症であると考えられます。すぐに精神科・神経科を受診する事をお考え下さい。
もっとも、上記の症状にいくつか当てはまったからといって、必ずしも心の病気とはいえません。どれも日常的な不調でも生じるものだからです。
例えば、大切な人を亡くしてしまった後、その人の声が聞こえた気がしたり、恋人にふられて何もする気が起きなくなったりするのは、必ずしも病的なものではなく、自然な心の反応ともいえます。こうした不調が自然で日常的な不調か、それとも心の病気に近い状態になっているのかを区別するためには、やはり医師の診察が必要です。
また、自分の心の調子が悪いと気付ける状態である事も、大切です。セルフチェックを行う上で、それらの症状が自分に当てはまるかを合理的に正しく自分で判断できる事が前提になります。心の調子が悪くなり過ぎてしまうと、自分では調子の悪さに気付けなくなってしまう場合があります。もしも心の調子が悪くなっていると自覚できた場合は、なるべく早い段階で気付けるように、普段から自分の心の調子に対する意識を高めて行きましょう。