対人恐怖症

対人状況への苦手意識は通常、経験を積む事で克服できますが、苦手意識が強まり、恐怖症のレベルになると、治療を受ける事が望ましくなります

初対面が苦手。人前でのスピーチはパスしたい。さらには、公衆トイレで隣に人がいると、不安になって、いつも個室に入ってしまう…など、他人と関わる必要のある社会的状況が苦手な人は少なくありません。

それでも、多くの方は何とか苦手意識に折り合いを付けながら、経験を積み、社会的状況への苦手意識を克服しているでしょうが、一方、対人恐怖が非常に強まってしまう場合もあり、人と関わる状況を避けるあまり、希望の仕事を選べないなど、深刻な支障が生じることがあります。対人恐怖症の治療法について詳しく解説します。

苦手意識の克服……基本は場数を踏むこと

まずは治療が必要な対人恐怖症ほどではないが「苦手意識」が強い人に向けて、苦手意識の克服法をご紹介しましょう。

対人関係は社会生活を送る上での基本的要素。挨拶はもとより、面接、仕事の打ち合わせ、電話の応答、プレゼンテーションなど、対人技術の得手・不得手はその人の社会生活の質を決める重要な鍵になります。重度の対人恐怖症でなくても苦手意識がある場合は、何とかして自信をつけたいと考えると思います。

人前に出ることに苦手意識がある場合、克服法の基本は場数を踏むこと。例えばプレゼンテーションが苦手な人にとって、自信に満ちた様子でしっかりと落ち着いて話す上司の姿は眩しく映るでしょう。「あの人を見習って頑張って!」とアドバイスされても、「そんなことはわかっている。わかっているけど、人前に出ると違う自分になってしまう……」と落ち込んでしまうかもしれません。

しかし結局は場数を踏んで慣れることが、対人状況での不安を軽減し、自信を持つための王道です。いきなりハードルを高くせず、段階ごとのゴールを設定し、一歩ずつ苦手を克服していきましょう。この方法は、他の恐怖症の一般的な治療でも行われる行動療法と同じなのです。

対人恐怖症の治療は薬物療法、心理療法が中心

人前に出ることに不安を感じると、周囲の人の輪に入っていきにくいもの。さらに人と関わるのを恐れ、日常生活に大きな支障が生じる「社会不安障害」のレベルになると、精神科、神経科での治療が必要となります。未治療のままだと、症状が重症化かつ慢性化しやすくなるため注意が必要です。

対人恐怖症(社会不安障害)の治療法は薬物療法、心理療法が中心。薬物療法の基本原理は、不安症状と深いかかわりのある脳内神経伝達物質の不具合を調整することにあります。不安、焦燥感の軽減、不眠、気持ちの落ち込みなどを軽減することが可能です。どの薬物が用いられるかは患者と薬との相性の問題もあり、個々のケースによりますが、一般的には脳内神経伝達物質のセロトニンを調整するSSRI、セロトニンとノルアドレナリンの両方を調整するSNRI、抗不安薬などが用いられます。

心理療法では、認知行動療法などの手法で、対人恐怖を増幅させる心理的問題に対処します。例えば「自分は周りの人と比べて劣った存在であり、いつも軽く見られている」といったネガティブな意識が強いと、他人の注目を浴びる場面で強い不安反応が起こりやすくなります。こうした思考の歪みは長い期間を経て本人の気質の一部のようになっているので、自力で認識し、矯正することは容易なことではありません。思考の歪みを改善して健全な方向へ矯正すると共に、不安が生じる状況や環境を避けるのではなく、段階的にあえて直面して訓練を積んでいきます。

対人恐怖に悩んだ場合、早めの精神科受診が重要

対人恐怖症の大きな問題点として、症状に気付いてから精神科で相談するまでに何年も経過してしまうことが少なくないことが挙げられます。対人恐怖症は決して自分の弱さや性格的欠点から生じているのものではありません。克服するためには治療が必要な病気なのです。

治療開始が遅くなればなるほど、症状が重症化かつ慢性化しやすく、さらに、うつ病、アルコールなどへの薬物依存など、他の心の病気を合併しやすくなります。早期に治療を受けることが回復を良好にする第一条件。もしもただの苦手意識では済まないほど社会生活に支障をきたしてしまう場合は、対人恐怖症(社会不安障害)のレベルに達している可能性もあります。早めに精神科(神経科)で相談してみるようにしましょう。
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