睡眠/睡眠のしくみ・快眠度チェックリスト

睡眠のメカニズムとリズム…夜眠くなり朝目覚める理由

【医師が解説】夜になったら眠くなり、朝になったら目が覚める。当たり前に思えるこの睡眠と覚醒のリズムは、睡眠促進物質と体内時計によって作られています。睡眠のメカニズムやノンレム睡眠とレム睡眠を繰り返す睡眠周期など、睡眠に関する基本を解説します。

坪田 聡

執筆者:坪田 聡

医師 / 睡眠ガイド

眠くなるメカニズム……睡眠促進物質と体内時計が2大要因

眠り猫

行儀よく座って眠る猫は、ノンレム睡眠中です

睡眠中でも、脳の機能がすべて止まるわけではありません。眠らせるための脳が働いているからこそ、私たちは眠ることができるのです。では、どういう仕組みで眠くなるのでしょうか?

眠気を決める2大要因は、睡眠促進物質体内時計です。

長い時間、運動を続けていると、筋肉に疲労物質がたまって、十分な力が発揮できなくなります。脳でも同様のことが起こり、脳が働く時間と量に比例して、睡眠促進物質がたまってきます。現在、睡眠促進物質としては、プロスタグランディンやサイトカイン、神経ペプチドなどが知られていますが、それぞれの詳しい働きはまだよく分かっていません。

睡眠促進物質が増えすぎると脳が壊れてしまうので、睡眠促進物質の生産を止め、さらにこれを分解するために、脳の働きを止めて眠る必要があります。このメカニズムを、恒常性維持機構と呼びます。徹夜明けのときに深く長く眠るのは、主にこのメカニズムによるものです。

真っ暗な実験室で生活していても、人間はある程度、規則正しく眠ったり目覚めたりします。これは、体に組み込まれている体内時計のリズムに従って、生きているからです。体内時計は脳にある中枢時計と、体中のあちこちにある末梢時計がありますが、私たちの中枢時計の1日は24~25時間周期です。

体内時計の周期に従って、夜に眠くなり、朝には自然と目覚めるリズムを、概日リズムといいます。概日とは「およそ1日」の意味です。徹夜明けの朝に、眠気が少し軽くなるのは、この概日リズムによるものです。また、人間は睡眠だけでなく、体温や血圧、脈拍、ホルモンの分泌、免疫なども概日リズムの影響を受けています。

睡眠促進物質と体内時計のほかにも、眠気の強さを決める要因として、ストレスや悩みなどの精神的な要因、光や音などの環境要因、さらには病的要因などがあります。

ノンレム睡眠とレム睡眠……ヒトの睡眠周期は約1時間半

睡眠中の脳波には、一定のリズムがあります。寝ついてから次第に睡眠が深くなり、最も深くなってしばらくすると、今度はだんだん浅くなってきます。多くの人で睡眠の周期は約1.5時間あり、一晩に4~5回ほど繰り返されます。

睡眠が浅くなったところで目が覚めると、眠気が少なくスッキリ起きられます。ですから、寝ついてから6時間や7時間半、9時間たったころに目覚ましをセットしておくと、心地よい朝を迎えられます。

睡眠は、深さによって4つの段階に分けられていますが、性質の面でも2つに分けられています。それは、ノンレム睡眠レム睡眠です。レム睡眠とは Rapid Eye Movement の頭文字で、眠っているのに目玉が盛んに動いている状態です。

ノンレム睡眠中は、脳全体の活動が少なくなるので、脳が休んでいる状態です。脈拍数や血圧、呼吸数も減り、内臓も休んでいます。猫がアゴを前脚にのせるなどして、行儀よく眠っているときの睡眠がこれです。

ノンレム睡眠中には、成長ホルモンが分泌されたり、病原菌やウイルスに対する抵抗力が強化されたりします。成長ホルモンは、子どもを成長させるだけでなく、日中に痛んだ細胞をメンテナンスしてくれるので、大人にとっても重要なホルモンです。

眠り始めには少ないレム睡眠も、朝に近づくにつれて増え、睡眠周期の2~3割を占めるようになります。レム睡眠中は、ほぼ全身の筋肉がゆるんで、体が休んでいます。猫が横に倒れて眠っているときが、この状態です。

しかし、脳は起きているときと同じくらい、盛んに活動しています。レム睡眠中に目が覚めると、夢を思い出しやすくなることから、このときに記憶を定着させたり、起きているときの行動のシミュレーションをしたりしていると考えられています。

眠気が起こるメカニズムや睡眠のリズムは、理解できましたか? あわせて寝つきや目覚め、日中の眠気から自分の睡眠の質を診断したい方は「世界標準の快眠度チェックリストで、睡眠の質を測ろう」を、ぐっすり眠れるベッドや枕、照明など、ベストな快眠環境についてお知りになりたいときは「睡眠環境・寝室・ベッドの工夫」を、夜にぐっすり眠るために必要なことについては「快眠のための生活習慣」をお読みください。
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