不眠・睡眠障害/不眠・睡眠障害の種類

不眠を起こす怖い病気 前編:心の病

精神的な病気の初期症状として不眠が現われたり、逆に、長期間にわたり不眠が続くと精神に障害を起こすことがあります。ここでは、精神生理性不眠症、うつ病、PTSD による不眠について、詳しく解説します。

坪田 聡

執筆者:坪田 聡

医師 / 睡眠ガイド

不眠を起こす病気には、多くのものがあります
慢性的な不眠症に悩む方の約3分の1から半数は、何らかの精神医学的な障害を抱えているといわれています。

ここでは心の問題の中でも、特に多くみられる3つの病気に焦点を当てて、それぞれの症状や対処法を詳しく解説します。

【目次】
■ 睡眠時間に対する強いこだわりがあります ⇒ 1ページ目
何だかヤル気が起きません ⇒ 2ページ目
あのことを思い出してしまいます ⇒ 3ページ目


睡眠時間に対する強いこだわりがあります
⇒ 「精神生理性不眠症」

精神生理性不眠症
精神生理性不眠症は、睡眠習慣や睡眠環境を変えることで、かなり改善します
不眠症を起こす病気の中で最もよくみられるものは、「精神生理性不眠症」です。これは、神経質な部分があり、完全主義傾向が強い人に多くみられます。

精神的なストレスが高まると一時的な不眠になることは、多くの人が経験することです。普通は不眠の原因がなくなると不眠は解消されますが、睡眠に対するこだわりが必要以上に強い人は、不眠そのものを強く意識して悩み続けます。

そして、眠れないことに対する不安や恐怖が芽生え、ベッドに入ると「眠らなければいけない!」と精神的に緊張します。この「不眠恐怖」が新しいストレスとなって、不眠を慢性化してしまうのです。また、睡眠障害に詳しくない医師に相談しても、「気にしすぎ」などと軽くあしらわれて、さらに悪化していることもある

「精神生理性不眠症」は睡眠薬による治療が効果的ですが、その前に自分でできる対処法があります。それは、次に挙げる正しい睡眠習慣や睡眠環境について十分理解し、これまでの睡眠習慣・環境の良くないところを改善することです。

・ ベッドに入る時刻や、睡眠時間の長さにこだわリ過ぎない
・ 起きる時間を一定にする
・ 朝の光を十分に浴びる
・ 午後から夕方にかけて、適度に運動する
・ 寝室の環境を整える
・ ベッドは、睡眠と性生活以外に使わない
・ カフェインやアルコール、ニコチンを減らす
・ 眠る前に、リラックスする時間をとる

それでもまだ不眠が続くときには、「睡眠制限療法」を試してみましょう。


睡眠制限療法

精神生理性不眠症→快眠
ダラダラ寝を切り捨てて、睡眠の質を向上しましょう!
精神生理性不眠症の方は、睡眠時間が足らないと思い込んでいるため、少しでも長く眠ろうとして、ダラダラとベッドの中で過ごしがちです。しかしこれでは、浅い眠りの時間が増えるばかりで熟睡感を得られず、途中で目が覚めてしまう原因にもなります。

睡眠制限療法は、ベッドの中で過ごす時間 = 床上時間を制限して、床上時間と本当に必要な睡眠時間のギャップを少なくすることが目的です。また、浅い眠りの時間をなくすことで、逆に眠りを深くする効果もあります。

実際の睡眠制限療法は、次のような流れで行われます。

1.2週間の睡眠時間を記録する
2.実際の睡眠時間の平均に15分を加えた時間を、床上時間と決める
3.床上時間が5時間以下の場合には、5時間に設定する
4.起床時刻は一定とする
5.起床時刻から逆算した時刻に、ベッドに入る
6.日中には昼寝をせず、ベッドも使わない
7.起床時に、何時間眠れたかを記録する
8.5日間にわたって、床上時間の90%以上眠れたら、
床上時間を15分増やす
参考:「睡眠障害の対応と治療のガイドライン」

自分1人で睡眠制限療法を行うことが難しければ、睡眠治療の専門家から指導やカウンセリングを受けながら、実行してみてください。


次のページでは、不眠に加えてヤル気が出ない状態について、解説します。
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