大人の不安な表情は
子どもに伝わる
言葉が使えないからこそ、子どもは人の顔色を見て判断している |
1歳程度の子どもの前に、深い段差があるような状況を設定しておもちゃを置きます。そして、その先にお母さんの顔が見えるようにします。このとき、お母さんの表情が微笑んでいたとき、75%の子どもがおもちゃを取りに行ったのに対し、お母さんが怖れの表情をしていたときには、おもちゃを取りに行った子どもはいなかったのです。
この結果からも、子どもは自分が信頼する人の表情を観察して、物事や状況を判断していることがわかります。ではもし、養育者がいつも不安な顔や沈んだ顔をしていたらどうなるでしょう。子どもにもその不安が伝わり、何をするにも臆病になったり、自信をもって成長できなくなる可能性もあります。
「自己効力感」の高い
子どもに育てよう
子どもの心の成長を育むには、大人のリアクションが大切 |
このとき、養育者は「また泣いてる・・・」などと放っておいてはいけません。子どもの呼びかけに対応してあげることで、子どもは自分が発したメッセージが相手に伝わり、環境を変化させられたということを知るのです。
こうしたやりとりが続くうちに、子どもは行動を起こしている自分を認識します。そして、必要に応じて自分から外界に働きかけることで、望んだ状況に変えることがことができると感じられるようになります(このことを「自己効力感」といいます)。そして、この自己効力感が子どもの積極性を育むことにつながるのです。
たしかに、泣き叫ぶ子どものメッセージを判断し、逐一対応していくのは大変なことです。しかし、精神的な成長を助けるためには、こうした子どもの呼びかけに地道に応えていくことが必要になるのです。
参考文献:『図解雑学 発達心理学』山下富美代編著 井上隆二・井田政則・高橋一公・山村豊著/ナツメ社 『「うつ」を治す事典』大野裕監修/法研